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半島一奇抄(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

伊豆の海沿いに潜む奇談

  • 幻想

泉鏡花 1926年(昭和元年)10月

文字数
13,325字
読了目安
約27分
表記
新字新仮名
種別
随筆
舞台
  • 静岡県

この作品について

泉鏡花の紀行風の怪異譚。末尾に「大正十五(一九二六)年十月」とある。自動車で伊豆半島の海沿いの道を走る記者と、修善寺の旅館の主人が、車中の会話で土地にまつわる奇談を交わす。三津の浦をたどる景色の描写に、馬のように水を泳ぐ鼠の話、海から流れ着いた美しい女像の話が重なり、紀行と怪異談が入り混じる。

あらすじ

沼津へ向かって三津の浦をたどる自動車の中で、記者は相乗りの修善寺の旅館の主人から、土地に伝わる奇談を聞く。三島・沼津の隠居の「居士」が、庭の池を渡ろうとする馬のようなものを、鼠だと見破って騒ぐ話、青竹に入って海から漂着した美しい女像を、寄り神として祭った話などが、車窓の景色の描写と交互に語られる。隧道で不審な自動車とすれ違った二人は、女像を祭る祠の前に着き、そこに現れた鼠を自動車の警笛で追う。鼠は海へ飛び込み、馬のように波に乗って赤島へ泳ぎ去る。二人は祠を預かる夫人への後日の面会を願い、車は沼津へ向かう。

冒頭部(原文より)

「やあ、しばらく。」  記者が掛けた声に、思わず力が入って、運転手がはたと自動車を留めた。……実は相乗して席を並べた、修善寺の旅館の主人の談話を、ふと遮った調子がはずんで高かったためである。 「いや、構わず……どうぞ。」  振向いた運転手に、記者がちょっとてれながら云ったので、自動車はそのまま一軋りして進んだ。

「半島一奇抄」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

運転手は踊躍した。もの凄まじい爆音を立てると、さすがに驚いたように草が騒いだ。たちまち道を一飛びに、鼠は海へ飛んで、赤島に向いて、碧色の波に乗った。  ――馬だ――馬だ――馬だ――  遠く叫んだ、声が響いて、小さな船は舳を煽り、漁夫は手を挙げた。  その泳いだ形容は、読者の想像に任せよう。  巳の時の夫人には、後日の引見を懇請して、二人は深く礼した。  そのまま、沼津に向って、車は白鱗青蛇の背を馳せた。

「半島一奇抄」泉鏡花(青空文庫)

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