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猫の事務所(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物

かま猫がうけた理不尽ないじめ

  • 幻想

宮沢賢治 1926年(昭和元年)3月 「月曜」

文字数
6,258字
読了目安
約13分
表記
新字旧仮名

この作品について

宮沢賢治が1926年(大正15年)、雑誌「月曜」に発表した童話。副題は「ある小さな官衙に関する幻想」。猫の歴史と地理を調べる「猫の第六事務所」を舞台に、かまどで眠るため体が煤で汚れている「かま猫」が、ほかの書記たちから理不尽にいじめられ、仲間はずれにされていくさまを描く。猫たちの振る舞いと、かま猫の胸の内を通して、いじめと差別の理不尽を、賢治が寓話に託して静かに、しかし鋭く告発した一編である。

あらすじ

軽便鉄道の停車場の近くに、猫の第六事務所があった。ここは主に、猫の歴史と地理を調べるところで、黒い繻子の服を着た四人の書記は、みなに尊敬される羨望の的だった。事務長は大きな黒猫、書記には白猫、虎猫、三毛猫、そして四番書記の「かま猫」がいる。かま猫とは、寒がりで、いつもかまど(竈)のなかで眠るために、体じゅうが煤で汚れている猫のこと。そのみなりのために、かま猫は他の書記たちから嫌われ、いじめられていた。ある日、かま猫がかぜをひいて休んだのをよいことに、ほかの猫たちは、かま猫のことを事務長に悪く言い、しだいに仲間はずれにしていく。無実の言いがかりに、かま猫はただ涙を流すばかり。そこへ通りかかった大きな獅子が、この光景を見て、たまりかねたように一喝する。「お前たちは何をしているか。そんなことで地理も歴史も要ったはなしでない。やめてしまえ。えい。解散を命ずる」――こうして猫の事務所は廃止になった。「ぼくは半分獅子に同感です」。いじめと差別の理不尽を、賢治が寓話に託して告発した童話である。

登場人物

冒頭部(原文より)

 軽便鉄道の停車場のちかくに、猫の第六事務所がありました。ここは主に、猫の歴史と地理をしらべるところでした。  書記はみな、短い黒の繻子の服を着て、それに大へんみんなに尊敬されましたから、何かの都合で書記をやめるものがあると、そこらの若い猫は、どれもどれも、みんなそのあとへ入りたがつてばたばたしました。

「猫の事務所」宮沢賢治(青空文庫)

末尾部(原文より)

「お前たちは何をしてゐるか。そんなことで地理も歴史も要つたはなしでない。やめてしまへ。えい。解散を命ずる」  かうして事務所は廃止になりました。  ぼくは半分獅子に同感です。

「猫の事務所」宮沢賢治(青空文庫)

名文

ぼくは半分獅子に同感です。

いじめのはびこる猫の事務所を獅子が解散させたあと、語り手が添える最後の一行。「半分」という留保に、単純な勧善懲悪では終わらせない賢治の複雑な思いがこもる。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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