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オツベルと象(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物

豪農オツベルと白象

  • 幻想

宮沢賢治 1926年(昭和元年)1月 「月曜」

文字数
5,708字
読了目安
約11分
表記
新字新仮名

この作品について

宮沢賢治が1926年(大正15年)、雑誌「月曜」の創刊号に発表した童話。賢治が生前に発表した数少ない作品のひとつである。「ある牛飼いがものがたる」という枠のなかで、強欲な豪農オツベルが、一頭の白象を言葉巧みに働かせはじめる経緯が語られる。独特の擬音とリズムに満ちた語り口が魅力で、労働と搾取の寓意をはらんだ、賢治童話の代表作のひとつである。

あらすじ

ある牛飼いが語る物語。稲扱ぎ機械を六台も据えて羽振りのよい豪農オツベルのもとへ、一頭の白い象がのそのそとやって来て住みつく。はじめは無邪気に力仕事を面白がっていた白象だったが、抜け目のないオツベルは言葉巧みに、重い時計と鎖と分銅を象の身につけさせ、藁もろくに与えずに苛酷な労働を課していく。次第にやせ衰えた白象は、あるとき赤い月に向かって「苦しいです。サンタマリア」と訴え、仲間の象たちへ助けを求める手紙を書いて森へ送る。手紙を受け取った象の群れは怒り狂い、砂けむりを上げてオツベルの屋敷へどっと押し寄せる。オツベルは白象を小屋に閉じ込め、押し寄せる象たちに銃を撃つが、塀を越えて落ちてきた象たちの下でつぶされる。仲間に鎖と分銅をはずしてもらった白象は、「ああ、ありがとう。ほんとにぼくは助かったよ」と、なぜかさびしく笑うのだった。搾取する者の末路と、救われてなお晴れやかとはいえぬ結末を、賢治特有の音とリズムに満ちた語りで描いた寓話的な童話である。

登場人物

冒頭部(原文より)

……ある牛飼いがものがたる 第一日曜  オツベルときたら大したもんだ。稲扱器械の六台も据えつけて、のんのんのんのんのんのんと、大そろしない音をたててやっている。  十六人の百姓どもが、顔をまるっきりまっ赤にして足で踏んで器械をまわし、小山のように積まれた稲を片っぱしから扱いて行く。藁はどんどんうしろの方へ投げられて、また新らしい山になる。そこらは、籾や藁から発ったこまかな塵で、変にぼうっと黄いろになり、まるで沙漠のけむりのようだ。  そのうすくらい仕事場を、オツベルは、大きな琥珀のパイプをくわえ、吹殻を藁に落さないよう、眼を細くして気をつけながら、両手を背中に組みあわせて、ぶらぶら往ったり来たりする。

「オツベルと象」宮沢賢治(青空文庫)

末尾部(原文より)

「まあ、よかったね、やせたねえ。」みんなはしずかにそばにより、鎖と銅をはずしてやった。 「ああ、ありがとう。ほんとにぼくは助かったよ。」白象はさびしくわらってそう云った。

「オツベルと象」宮沢賢治(青空文庫)

名文

オツベルときたら大したもんだ。

牛飼いの語りで始まる冒頭。呆れとも感嘆ともつかぬ一言が、搾取する側の大きさと、それを下から見上げる庶民の目線を同時に立ち上げる。

「ああ、ありがとう。ほんとにぼくは助かったよ。」白象はさびしくわらってそう云った。  おや〔一字不明〕、川へはいっちゃいけないったら。

仲間の象たちに助け出された白象の言葉と、物語の最後の一行。語り手が突然だれかに呼びかけて終わる謎めいた結びは、原稿の一字が判読できないことも相まって、読む者の想像をかき立ててきた。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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