蛇くひ(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
蛇を喰らう乞食の一団
- 怪奇
- 文字数
- 2,661字
- 読了目安
- 約5分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 富山県
この作品について
泉鏡花の短編。富山の神通川のほとり、郷屋敷田畝を舞台に、蛇を生で食べて人々を脅かす乞食の一団「応」の恐ろしい習俗と、子供たちが歌う不気味な童謡を、擬古調の文語で、風聞を書き留めるような筆致で綴る。物語の筋よりも、土地に漂う怪異の気配を味わう小品。初出年月は図書カードに記載がない。
あらすじ
神通川の堤に近い郷屋敷田畝は、佐々成政の別邸の跡で、榎の大樹の下に「応」と呼ばれる長髪の乞食の一団が現れる。彼らは食を与えられないと、袂から這い出た蛇を掴んで噛み裂き、家の敷居に吐き散らして復讐する。蛇は榎の洞から集め、鼎に入れて煮て、身を抜いて食らい、去るときは屍を埋めて跡を残さない。「お月様幾つ」「お十三七つ」と声を合わせて走り去る。町の子供たちは「鬼の来ぬ間に豆拾乎」という童謡を歌い、やがて「屋敷田畝に光る物ア何ぢや、蟲でないのぢや、目の玉ぢや」という新しい歌が流れる。語り手は、応の頭目が現れる前触れかと案じて結ぶ。
冒頭部(原文より)
西は神通川の堤防を以て劃とし、東は町盡の樹林境を爲し、南は海に到りて盡き、北は立山の麓に終る。此間十里見通しの原野にして、山水の佳景いふべからず。其川幅最も廣く、町に最も近く、野の稍狹き處を郷屋敷田畝と稱へて、雲雀の巣獵、野草摘に妙なり。 此處往時北越名代の健兒、佐々成政の別業の舊跡にして、今も殘れる築山は小富士と呼びぬ。
「蛇くひ」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
無意無心なる幼童は天使なりとかや。げにもさきに童謠ありてより(應)の來るに一月を措かざりし。然るに今は此歌稀々になりて、更にまた奇異なる謠は、 屋敷田畝に光る物ア何ぢや、 蟲か、螢か、螢の蟲か、 蟲でないのぢや、目の玉ぢや。 頃日至る處の辻にこの聲を聞かざるなし。 目の玉、目の玉! 赫奕たる此の明星の持主なる、(應)の巨魁が出現の機熟して、天公其の使者の口を藉りて、豫め引をなすものならむか。
「蛇くひ」泉鏡花(青空文庫)
原文を読む
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