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貧民倶楽部(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

慈善の仮面を剥ぐ貧民の首領

  • 社会

泉鏡花 1895年(明治28年)7月 「北海道毎日新聞」

文字数
55,302字
読了目安
約1時間51分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

1895年(明治28年)7月、「北海道毎日新聞」に発表された長編。婦人慈善会の開かれる日、貴婦人たちの偽善を暴こうと、鮫ヶ橋の貧民たちを率いる女首領お丹が、上流の人々に迫っていく。馬車を止める屑屋、慈善会へ押しかける乞食の隊列、秘密を握られた人々の狼狽が、文語調の勢いのある語りで描かれる。慈善の欺瞞と社会の格差を風刺した、初期の作品。

あらすじ

六六館で婦人慈善会が開かれる日、伯爵夫人の馬車が狸穴の細道で、行き倒れを装った屑屋に止められる。その様子を見ていた婦人は、のちに会場で貴婦人たちの売り子に毒づき、わざと騒ぎを起こす。慈善会の催主・深川綾子は、談話室で婦人をおとなしくさせたかに見えたが、婦人の正体は鮫ヶ橋の貧民窟を束ねる女首領のお丹だった。お丹は、屠犬児の弥陀平ら貧民たちを使って、華族の邸で犬の死を償わせる芝居を打ち、慈善会に乞食の隊列を押し込ませて「税金」を取り立てる。邸では怪しい事件が続き、駿河台の老婦人は貧民たちに囲まれて責められる。そして深川綾子は、お丹に秘密を突きつけられ、悔恨と恐怖のあまり、狂乱して倒れ伏す。お丹は「まだあんな目に逢わせるのが二三人ある」と言って去っていく。

登場人物

冒頭部(原文より)

六六館に開かるる婦人慈善会に臨まんとして、在原伯の夫人貞子の方は、麻布市兵衛町の館を二頭立の馬車にて乗出だせり。  いまだ額に波は寄らねども、束髪に挿頭せる花もあらなくに、青葉も過て年齢四十に近かるべし。小紋縮緬の襲着に白襟の衣紋正しく、膝の辺に手を置きて、少しく反身の態なり。

「貧民倶楽部」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

お丹は始終を見物して、「ふむ、狂人になるだけの罪を造った婦人と見える。可し。」と呟きて、「さあ、帰ろう。」  門を出づる時、屠犬児が、「姉御あんまりだ。」「酷いじゃねえか。」とその気色を物色えば、自若として、「なにまだ、あんな目に逢わせるのが二三人あるよ。」

「貧民倶楽部」泉鏡花(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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