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ひとごろし(山本周五郎)のあらすじ・登場人物

臆病者と評判の若侍の大役

  • 心理
  • 風刺

山本周五郎 1964年(昭和39年)10月 「別冊文藝春秋」

文字数
22,612字
読了目安
約45分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 福井県

この作品について

山本周五郎が1964年(昭和39年)、「別冊文藝春秋」に発表した短編。臆病者と評判の若侍・双子六兵衛が、だれもが恐れて引き受け手のない、藩きっての剣客への上意討ちの大役に名乗り出る。腕ずくではない六兵衛の奇策が、行く先々で人々を驚かせる。勇気とは何か、力とは何かを、諧謔をこめて問い直した作品として親しまれ、映画化もされた。

あらすじ

越前福井藩の若侍・双子六兵衛は、これといった事実もないのに、いつしか家中一の臆病者と決めつけられ、当人までがそう信じこんでいる。そんな折、藩の剣術指南で「日置流の達人」と恐れられる仁藤昂軒が人を斬って出奔し、上意討ちの討手を出すことになる。だが昂軒の恐ろしい腕を知る者は誰も名乗り出ない。そこへ、臆病者の汚名をそそぎ、婚期を逃した妹かねに良縁をもたらそうと、六兵衛が討手を買って出る。剣ではとうてい敵わぬ六兵衛が用いたのは、意表を突く一手だった。彼は昂軒を見つけると、斬りかかるどころか、その後をつけまわし、宿場でも街道でも人が集まるたびに「ひとごろし、ここにひとごろしがいる」と大声で叫びつづける。世間の目にさらされ、宿にも泊まれず、食事も休息もままならぬ昂軒は、腕は立っても打つ手がなく、次第に消耗し、羞恥と孤立に追いつめられてゆく。道中で出会ったおようの助けも得ながら、六兵衛はついに、一度も刀を抜かぬまま昂軒を降参させる。首の代わりに髻を切って持ち帰った六兵衛は、上意討ちを見事に果たし、おまけに嫁まで連れ帰って、妹の縁談もめでたく調うのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

 双子六兵衛は臆病者といわれていた。これこれだからという事実はない。誰一人として、彼が臆病者だったという事実を知っている者はないが、いつとはなしに、それが家中一般の定評となり、彼自身までが自分は臆病者だと信じこむようになった。――少年のころから喧嘩や口論をしたためしがないし、危険な遊びもしたことがない。

「ひとごろし」山本周五郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

「済まないが」と六兵衛が云った、「その髻を切ってくれ、それを首の代りに持って帰る」 「髻が首の代りになるのか」 「なま首は腐るからな」と六兵衛が云った、「それに私は、人を殺したり自害するのを見たりするのは、好かないんだ」 「偏耳録」をまたここで引用するが、双子六兵衛は上意討を首尾よくはたし、おまけに嫁まで伴れて来たし、その高い評判によって、彼の妹のかね女も、中野中老の息子大八郎と、めでたく婚姻のはこびになった。

「ひとごろし」山本周五郎(青空文庫)

原文を読む

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