アプリで読む

無料・登録不要

ひやめし物語(山本周五郎)のあらすじ・登場人物

冷飯食いの青年の清らかな恋

  • 歴史
  • 心理

山本周五郎 1947年(昭和22年)4月 「講談雑誌」

文字数
15,869字
読了目安
約32分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 石川県

この作品について

山本周五郎が1947年(昭和22年)、「講談雑誌」に発表した時代小説。武家の四男坊として「冷飯食い」の部屋住み暮らしを送る、古本好きの青年・大四郎。街ですれ違う一人の女性に心を惹かれた彼の、初々しい恋の顛末を描く。おっとりした青年と、千羽鶴に願いをこめた娘の、清らかな結びつきが心にしみる、山本の人情ものである。

あらすじ

柴山家の四男坊・大四郎は、二十六歳になっても縁談に恵まれず、兄の厄介になる「冷飯食い」の部屋住み暮らし。だが当人はさして苦にもせず、月々の小遣いを溜めては古本を買い、傷んだ書物を丹念に直して蔵書印を捺すのを、この上ない楽しみにしていた。その古本あさりの途上、大四郎は一人の女性とすれ違う。決して美人ではないが、こちらを見てぱちぱちと目叩きをするとき、そこだけ花が咲くように美しくなる——そんな娘に、彼はどうしようもなく心を惹かれてしまう。自分の気持ちに気づいた大四郎は、すぐに母のもとへ相談にいく。この素直さが、大四郎という青年の得がたい持ち味だった。やがて結ばれた二人。妻となった娘・ぬひは、大四郎に打ち明ける。願いごとがあるときは観音様へ鶴を折り、九百九十九羽まで折ってひたすら祈り、願いが叶ったら千羽めを納めるのだ、と。「わたくし願いが協いましたの……これは千羽めでございますわ」。娘のひそかな祈りが、実は大四郎との縁を願うものだったと知れる結末が、静かな感動を呼ぶ。おっとりした青年と一途な娘の清らかな恋を描いた、山本の人情ものである。

登場人物

冒頭部(原文より)

 大四郎は一日のうち少なくとも二度は母の部屋へはいってゆく、「お母さんなにかありませんか」と、云うことは定っている。云わないで黙っているときもある。ながいあいだの習慣だから母親の椙女は、彼がそう云おうと黙っていようと、茶箪笥のほうへ振返って、「上の戸納をあけてごらんなさい、鉢の中に飴があった筈ですよ」と云う。

「ひやめし物語」山本周五郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

「わたくし願いが協いましたの」ぬひは恥ずかしさに耐えぬもののように呟いた、「……これは千羽めでございますわ」

「ひやめし物語」山本周五郎(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品