アプリで読む

無料・登録不要

星あかり(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

夜の海辺で自分に出会う

  • 怪奇
  • 幻想

泉鏡花 

文字数
4,178字
読了目安
約8分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 神奈川県

この作品について

泉鏡花の短編。鎌倉の寺に寄宿する青年が、夏の夜、閉め出された墓地から海辺の由比ヶ浜へとさまよい歩く不安な一夜を、内面の恐怖とともに描く。夜明け前の海の描写と、帰りついた寺の部屋で出会う思いがけない光景が見どころ。底本の『書物の王国11 分身』は、分身をテーマとするアンソロジー。初出年月は図書カードに記載がない。

あらすじ

鎌倉の妙長寺に寄宿する「自分」は、夜中、墓場を歩くと言って同宿の医学生と言い争い、墓地へ出るが、戻ってみると雨戸が閉まっていて入れない。墓石を台にして戸を揺すってもあかず、夜の境内を出て乱橋を渡り、由比ヶ浜へ向かう。人家の犬の声に怯え、空の荷車が山道へ入って消えるのを見ても足を止められず、暗い浜辺で寄せる波に追われる。難破船の舷にすがって助かろうとするが、轟く大波に襲われ、跣足で寺へ逃げ帰る。本堂の戸を開けて蚊帳の中を覗くと、肌脱ぎで眠る医学生のそばに、仰向けに寝ている自分の顔があった。冷や汗が流れ、殺されると思いながら振り返るが、さまよってきた自分の姿はそこにない。母の名を念じて朝を待ち、人は恁ういうことから気が違うのであろうと思う。

登場人物

冒頭部(原文より)

もとより何故という理はないので、墓石の倒れたのを引摺寄せて、二ツばかり重ねて台にした。  その上に乗って、雨戸の引合せの上の方を、ガタガタ動かして見たが、開きそうにもない。雨戸の中は、相州西鎌倉乱橋の妙長寺という、法華宗の寺の、本堂に隣った八畳の、横に長い置床の附いた座敷で、向って左手に、葛籠、革鞄などを置いた際に、山科という医学生が、四六の借蚊帳を釣って寝て居るのである。

「星あかり」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

ひたと冷い汗になって、眼をき、殺されるのであろうと思いながら、すかして蚊帳の外を見たが、墓原をさまよって、乱橋から由井ヶ浜をうろついて死にそうになって帰って来た自分の姿は、立って、蚊帳に縋っては居なかった。  もののけはいを、夜毎の心持で考えると、まだ三時には間があったので、最う最うあたまがおもいから、そのまま黙って、母上の御名を念じた。――人は恁ういうことから気が違うのであろう。

「星あかり」泉鏡花(青空文庫)

名文

もとより何故という理はないので、墓石の倒れたのを引摺寄せて、二ツばかり重ねて台にした。

冒頭の一文。鎌倉の寺の墓原で、閉め出された「自分」が倒れた墓石を台にする。理由のない行いから怪異の夜が始まる。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品