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星女郎(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

峠の一軒家に隠れた美女

  • 幻想
  • 怪奇

泉鏡花 1908年(明治41年)11月

文字数
52,279字
読了目安
約1時間45分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 石川県
  • 富山県

この作品について

倶利伽羅峠の一軒家をめぐる怪異譚。1908年(明治41年)11月に発表された。夏の峠道で幻に惑わされた青年が、猿ヶ馬場に残る一軒家で、若い女と、月に一度山へ上ってくる貴婦人とに出会う。かつて貴婦人が弄んだ男たちの怨みが、若い女の膚に鬼百合の斑となって焼きつき、彼女に呪われた男は無事では済まないという。妖しさと哀れさの交錯する鏡花中期の幻想小説。

あらすじ

暑中休暇に倶利伽羅峠を訪ねた境三造は、新道の天田越で道を過ち、樹の重なる山中で怪しい媼たちに出会って正体を失いかける。たどり着いた猿ヶ馬場の広場には、買主も知れぬ一軒家が焼け残っていた。禁制の峠を越えた者は必ず煩う——御堂で出会った山伏の先達にそう聞かされた三造は、その家で若い女と、月に一度忍んで山に上ってくる貴婦人とに出会う。貴婦人はかつて多情のかぎりを尽くして幾人もの男を弄んだ人で、その怨みは若い女の雪のような膚に鬼百合の斑となって焼きついていた。呪われた男は必ず無事では済まない。三造を殺すまいと、若い女は烏瓜の蔓で我が身を縛り、動かぬという誓いを立てるのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

倶利伽羅峠には、新道と故道とある。いわゆる一騎落から礪波山へ続く古戦場は、その故道で。これは大分以前から特別好物な旅客か、山伏、行者の類のほか、余り通らなかった。――ところで、今度境三造の過ったのは、新道……天田越と言う。絶頂だけ徒歩すれば、俥で越された、それも一昔。汽車が通じてからざっと十年になるから、この天田越が、今は既に随分、好事。  さて目的は別になかった。

「星女郎」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

先達も拳を握って、不束ながら身命に賭けて諸共にその美女を説いて、悪き心を飜えさせよう。いざうれ、と清水を浴びる。境も嗽手水して、明王の前に額着いて、やがて、相並んで、日を正射に、白い、眩い、峠を望んで進んだ。  雲から吐出されたもののように、坂に突伏した旅人が一人。  ああ、犠牲は代った。  扶け起こすと、心なき旅人かな。朝がけに禁制の峠を越したのであった。峰では何事もなかったが、坂で、躓いて転んだはずみに、あれと喚く。膝から股へ真白な通草のよう、さくり切れたは、俗に鎌鼬が抓けたと言う。間々ある事とか。  先達が担いで引返した。

「星女郎」泉鏡花(青空文庫)

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