百面相役者(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物
人肉の面という恐ろしい空想
- ミステリ
- 怪奇
- 文字数
- 9,803字
- 読了目安
- 約20分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
日露戦争直後の地方都市を舞台に、変装芸の巧みな百面相役者をめぐる怪奇な空想を語る短編。「写真報知」1925年7月15日・25日号に連載。小学教員の「僕」が、怪奇趣味の新聞記者の先輩に連れられて探偵劇を観に行く。役者の芸から先輩が組み立てた恐ろしい想像が、一夜の話の中心となる。
あらすじ
「僕」は日露戦争の直後、小学教員をしながら上京の費用を貯めていた。ある春先の日曜、怪奇な物事に詳しい新聞記者の先輩Rに誘われ、観音の境内の劇場で、新帰朝の百面相役者が主演する探偵劇「怪美人」を観る。役者は男にも女にも、老人にも貴族にもなりきり、顔のしわや顔形まで変わって見える。芝居のあと、Rは一年前の新聞を取り出す。寺の墓地を荒らして死者の首を盗む首泥棒の記事で、被害者の一人である老婆の写真は、舞台の役者の変装姿と寸分違わなかった。Rは、首泥棒が盗んだ首から「人肉の面」を作り、それを着けて芝居を演じているのではないかと語る。Rは自分で真相を探ると言い、「僕」も賛成して、二人は夜更けまで興奮して語り合う。二日後に「僕」が訪ねると、Rは爆笑して種を明かす。首泥棒はとうに捕まっており、「人肉の面」はRの空想で、老婆の写真は役者本人の変装姿を新聞社で撮り、古い台紙に貼ったものにすぎなかった。退屈な人生も、自分で筋を創作して楽しめばよいとRは語る。
登場人物
- 僕 小学教員をしながら上京を志す語り手
- R 怪奇趣味の新聞記者。語り手の中学時代の先輩
- 百面相役者 変装の巧みさで評判の旅役者
冒頭部(原文より)
一 僕の書生時代の話しだから、随分古いことだ。年代などもハッキリしないが、何でも、日露戦争のすぐあとだったと思う。 その頃、僕は中学校を出て、さて、上の学校へ入りたいのだけれど、当時まだ僕の地方には高等学校もなし、そうかといって、東京へ出て勉強させてもらう程、家が豊でもなかったので、気の長い話しだ、僕は小学教員をかせいで、そのかせぎためた金で、上京して苦学をしようと思い立ったものだ。ナニ、その頃は、そんなのが珍らしくはなかったよ。何しろ給料にくらべて物価の方がずっと安い時代だからね。
「百面相役者」江戸川乱歩(青空文庫)
末尾部(原文より)
これで、この話しはおしまいだ。百面相役者はその後どうしたのか、一向うわさを聞かない。恐らく、旅から旅をさすらって、どこかの田舎で朽ちはててしまったのでもあろうか。
「百面相役者」江戸川乱歩(青空文庫)
原文を読む
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