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いなか、の、じけん(夢野久作)のあらすじ・登場人物

北九州の奇談ブラック連作

  • 風刺

夢野久作 1927年(昭和2年)7月 「探偵趣味」

文字数
39,558字
読了目安
約1時間19分
表記
新字新仮名
種別
随筆
舞台
  • 福岡県

この作品について

夢野久作が1927年(昭和2年)から1930年にかけて、「探偵趣味」「猟奇」などの雑誌に断続的に発表した連作小品集。作者が郷里・北九州の地方で実際に見聞きしたという、間の抜けた、あるいは薄気味の悪い出来事の数々を、一話わずか数行から数ページの短い掌編に仕立てて並べる。米泥棒があっけなく捕まる話、按摩の起こした珍騒動、村を騒がせた怪異など、田舎ならではの奇談・実話が、夢野一流のとぼけた語り口とブラック・ユーモアで綴られる。名探偵も大事件も登場しないが、そこはかとない可笑しみと怖さの漂う、異色の連作である。

あらすじ

「みんな、私の郷里、北九州の某地方の出来事で、私が見聞致しましたことばかりです」——作者はそう断って、田舎で起きた数々の小さな事件を書きつらねていく。村長の米倉から白米を盗んだ博奕打ちが、盗んだ米俵を積んだ車の傍でぐっすり寝込んでいてあっけなく捕まる「大きな手がかり」。按摩が引き起こす珍騒動「按摩の昼火事」。ほかにも、間の抜けた失敗談や、ぞっとするような怪異、人間の欲や愚かさがのぞく出来事が、一話ごとに短く切り取られて並ぶ。中には「五六行程の豆記事として新聞に載った」ような、ごく小さな出来事もある。作者は場所と名前をあえて伏せながら、記憶にあるかぎりの奇談を淡々と語り、その「間の抜けたところ」がかえって都会の読者の興味を惹くだろうと言う。探偵小説の名手・夢野久作が郷土に取材した、とぼけた語りとブラック・ユーモアの味わい深い連作掌編集である。

冒頭部(原文より)

 村長さんの処の米倉から、白米を四俵盗んで行ったものがある。  あくる朝早く駐在の巡査さんが来て調べたら、俵を積んで行ったらしい車の輪のあとが、雨あがりの土にハッキリついていた。そのあとをつけて行くと、町へ出る途中の、とある村外れの一軒屋の軒下に、その米俵を積んだ車が置いてあって、その横の縁台の上に、頬冠りをした男が大の字になって、グウグウとイビキをかいていた。

「いなか、の、じけん」夢野久作(青空文庫)

末尾部(原文より)

 みんな、私の郷里、北九州の某地方の出来事で、私が見聞致しましたことばかりです。五六行程の豆記事として新聞に載ったのもありますが、間の抜けたところが、却って都に住む方々の興味を惹くかも知れぬと存じまして、記憶しているだけ書いてみました。場所の事もありますので、場所と名前を抜きにいたしましたことをお許し下さい。

「いなか、の、じけん」夢野久作(青空文庫)

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