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いしが奢る(山本周五郎)のあらすじ・登場人物

俊才の若殿と染物女の恋

  • 歴史
  • 心理

山本周五郎 1952年(昭和27年)10月 「サンデー毎日」

文字数
22,312字
読了目安
約45分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 京都府

この作品について

山本周五郎が1952年(昭和27年)、「サンデー毎日」に発表した時代小説。俊才・美男で剣も学問も群を抜く若き家老の子・本信保馬と、しみ抜きを生業とする女・いし。藩の権力の駆け引きのなかで芽ばえる、身分を越えた恋を描いた一編である。

あらすじ

梅雨のなか、江戸から本信保馬が宮津へ到着する。江戸邸次席家老の子で、俊才・美男、学問も群を抜き、柳生道場では三傑の一という評判の男だ。来訪の目的は公表されなかったが、勘定吟味役(会計監査官)ではないかとの噂が流れ、藩の財政が行き詰まるなか、商人や各役所の使者が挨拶に押しかける。保馬はそれらの客には会わず、供の者に応対させたが、外島又兵衛という、かつて江戸邸にいて今は宮津に婿入りした男が来ると、客間へ通させる。才ばしって隙のない又兵衛の、なれなれしい態度——藩の権力をめぐる、緊迫した駆け引きが交わされる。その一方で、保馬の心を捉えていたのは、しみ抜きを生業とする女・いしだった。物語の結び、保馬に抱きしめられたいしは、あまやかに泣きながら言う。「じゃああたし、ずいぶん儲かっちゃいますわね——もうしみ抜き代を払わなくってもよくなるんですもの、ねえ、そうですわね」。権力の駆け引きの陰で芽ばえる、身分を越えた恋の情感を描いた、山本の一編である。

登場人物

冒頭部(原文より)

 六月中旬のある日、まだ降り惜しんでいる梅雨のなかを、本信保馬が江戸から到着した。  保馬は江戸邸の次席家老の子で、その名は国許でもかなりまえから知られていた。俊才で美男で、学問も群を抜いているし、柳生道場では三傑の一という、誂えたような評判であった。

「いしが奢る」山本周五郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

「じゃああたし、ずいぶん儲かっちゃいますわね」と咽びあげながら云った、「――もうしみ抜き代を払わなくってもよくなるんですもの、ねえ、そうですわね」  保馬は黙ったまま強く抱き緊めた。いしはすっかり凭れかかってあまやかに泣きはじめた。

「いしが奢る」山本周五郎(青空文庫)

原文を読む

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