いしが奢る(山本周五郎)のあらすじ・登場人物
俊才の若殿と染物女の恋
- 歴史
- 心理
- 文字数
- 22,312字
- 読了目安
- 約45分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 京都府
この作品について
山本周五郎が1952年(昭和27年)、「サンデー毎日」に発表した時代小説。俊才・美男で剣も学問も群を抜く若き家老の子・本信保馬と、しみ抜きを生業とする女・いし。藩の権力の駆け引きのなかで芽ばえる、身分を越えた恋を描いた一編である。
あらすじ
梅雨のなか、江戸から本信保馬が宮津へ到着する。江戸邸次席家老の子で、俊才・美男、学問も群を抜き、柳生道場では三傑の一という評判の男だ。来訪の目的は公表されなかったが、勘定吟味役(会計監査官)ではないかとの噂が流れ、藩の財政が行き詰まるなか、商人や各役所の使者が挨拶に押しかける。保馬はそれらの客には会わず、供の者に応対させたが、外島又兵衛という、かつて江戸邸にいて今は宮津に婿入りした男が来ると、客間へ通させる。才ばしって隙のない又兵衛の、なれなれしい態度——藩の権力をめぐる、緊迫した駆け引きが交わされる。その一方で、保馬の心を捉えていたのは、しみ抜きを生業とする女・いしだった。物語の結び、保馬に抱きしめられたいしは、あまやかに泣きながら言う。「じゃああたし、ずいぶん儲かっちゃいますわね——もうしみ抜き代を払わなくってもよくなるんですもの、ねえ、そうですわね」。権力の駆け引きの陰で芽ばえる、身分を越えた恋の情感を描いた、山本の一編である。
登場人物
- 本信保馬 俊才・美男の若き家老の子
- いし しみ抜きを生業とする女
- 外島又兵衛 藩の年寄役の婿養子
冒頭部(原文より)
六月中旬のある日、まだ降り惜しんでいる梅雨のなかを、本信保馬が江戸から到着した。 保馬は江戸邸の次席家老の子で、その名は国許でもかなりまえから知られていた。俊才で美男で、学問も群を抜いているし、柳生道場では三傑の一という、誂えたような評判であった。
「いしが奢る」山本周五郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
「じゃああたし、ずいぶん儲かっちゃいますわね」と咽びあげながら云った、「――もうしみ抜き代を払わなくってもよくなるんですもの、ねえ、そうですわね」 保馬は黙ったまま強く抱き緊めた。いしはすっかり凭れかかってあまやかに泣きはじめた。
「いしが奢る」山本周五郎(青空文庫)
原文を読む
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