十六日(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
盆の休みに訪れた若い学生
- 心理
- 家族
- 文字数
- 4,206字
- 読了目安
- 約8分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 岩手県
この作品について
宮沢賢治の短い散文作品。盆の十六日、鉱山も休みで、年に二日しかない休日を過ごす坑夫の嘉吉と妻のおみちのもとに、道を尋ねにきた大学生が現れる。それをきっかけに、嘉吉の嫉妬と怒り、おみちの涙、そして仲直りが、岩手の方言の会話で描かれる。夫婦の心の機微を短い場面に凝縮した作品である。
あらすじ
盆の十六日、鉱山も休みの日。おみちは餅の三いろを拵え、嘉吉は朝寝ののち川に顔を洗いに行く。嘉吉は鉱山の坑木係の頭株で、冬に撰鉱に来ていた村の娘おみちと一緒になり、三年経ったが、まだ子供はいない。二人が膳についたとき、表で岩を叩く音がして、仙台の大学の学生が、地図にある水車のことを尋ねにくる。嘉吉は気難しげに応対するが、地図を見て水車の跡と知り、おみちとともに学生に食事を勧める。学生は礼を言い、煙草とキャラメルを置いて出ていく。おみちは娘のようなぼんやりした顔をしており、それを見た嘉吉は、おみちがあの学生に惹かれたのだと思って逆上し、膳を蹴飛ばして怒鳴りつける。おみちは泣き伏す。しかし嘉吉はやがて自分の勘違いかもしれないと思い、きれいな男を好きだと言っても怒らないと言って、おみちをなだめる。おみちは笑い出し、二人は、さっき学生にもらったキャラメルと煙草を前に、改めて遊びの休みを過ごす。
登場人物
- 嘉吉 鉱山の坑木係の頭株。気が荒いが妻を思う
- おみち 嘉吉の妻。村の娘で、冬の撰鉱場で嘉吉と知り合う
- 学生 仙台の大学で地質を学ぶ若者
冒頭部(原文より)
よく晴れて前の谷川もいつもとまるでちがって楽しくごろごろ鳴った。盆の十六日なので鉱山も休んで給料は呉れ畑の仕事も一段落ついて今日こそ一日そこらの木やとうもろこしを吹く風も家のなかの煙に射す青い光の棒もみんな二人のものだった。 おみちは朝から畑にあるもので食べられるものを集めていろいろに取り合せてみた。嘉吉は朝いつもの時刻に眼をさましてから寝そべったまま煙草を二、三服ふかしてまたすうすう眠ってしまった。
「十六日」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
おみちの胸はこの悪魔のささやきにどかどか鳴った。それからいきなり嘉吉をとび退いて、 (何云うべ、この人あ、人ばがにして。)そして爽かに笑った。嘉吉もごろりと寝そべって天井を見ながら何べんも笑った。そこでおみちははじめて晴れ晴れじぶんの拵えた寒天もたべた。餅もたべた。キャラメルの箱と敷島は秋らしい日光のなかにしずかに横わった。
「十六日」宮沢賢治(青空文庫)
原文を読む
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