花壇工作(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
病院の中庭で花壇を描く
- 風刺
- 文字数
- 1,503字
- 読了目安
- 約3分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
病院の中庭に花壇を造ることになった「おれ」が、設計図を持たずに現場で杭を打ち、ベートーヴェンの幻想曲を花で描くような花壇を思い描く短編。院長や医学士、窓から見下ろす大勢の顔とのやりとりの中で、思い描くものと現実のずれが、早口の独白で語られる。ト書きのような丸括弧の台詞が混じるなど、戯曲めいた調子もある。新字旧仮名で書かれた短い未定稿の小品。
あらすじ
おれは設計図を持たず、仕事着のまま、病院の二つの棟に挟まれた緑色の中庭にテープを持って立つ。書くのが面倒なのと、現場ですぐ工作する誰かの流儀を気取ったのとで、草取りの人も院長の車夫も面白がって手伝い、箱を割った白い杭や包帯の余りの白い毬もできる。おれは、正方形のつめくさの絨毯の上で夕方まで踊るような気持ちで、音楽を図形に直し、花でベートーヴェンの幻想曲を描こうと考える。四月の初め、建物の影の落ちる限界を目測し、対角線を引かせて中心に杭を立てると、窓に院長が立ち、どんな花を植えるのか、正方形にするのかと興奮して尋ねる。おれは周りの窓に並ぶ愚かな顔を見て腹を立て、早口で、対称形しかないでしょうと答える。院長は農夫に杭の周りに円を描かせ、正方形をつくらせる。おれは、退屈な円では音楽がない、自分の考えは対称を取りながら不規則なモザイクにして、練瓦のジグザグな影を日に移ろわせるものだと思い、設計図を作って院長と二人で相談しようと決める。おれは愉快な数時間を壊した窓の顔をにらみまわすが、誰もおれを見ていない。
登場人物
- おれ 設計図なしで花壇を造ろうとする園芸家
- 院長 窓から口を出し、正方形の花壇を命じる
- 医学士・農夫・看護婦たち 中庭を見守る人々
冒頭部(原文より)
おれは設計図なぞ持って行かなかった。 それは書くのが面倒なのと、もひとつは現場ですぐ工作をする誰かの式を気取ったのと、さう二っつがおれを仕事着のまゝ支那の将軍のやうにその病院の二つの棟にはさまれた緑いろした中庭にテープを持って立たせたのだ。
「花壇工作」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
おれはこの愉快な創造の数時間をめちゃめちゃに壊した窓のたくさんの顔をできるだけ強い表情でにらみまはした。ところが誰もおれを見てゐなかった。次におれはその憐れむべき弱い精神の学士を見た。それからあんまり過鋭な感応体おれを撲ってやりたいと思った。
「花壇工作」宮沢賢治(青空文庫)
原文を読む
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