貝の火(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
貝の火の輝く六日間
- 幻想
- 文字数
- 14,666字
- 読了目安
- 約29分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
ひばりの子を助けた子兎のホモイが「貝の火」という宝珠を授かる。その玉は、持ち主の心のありようをそのまま映す鏡だった——宮沢賢治が描いた、驕りと堕落の童話。わずか六日間の顛末は、賢治作品のなかでもとりわけ厳しい教訓を残す。
あらすじ
野原がいいにおいでいっぱいの朝、子兎のホモイは流れに落ちたひばりの子を見つけ、自分もおぼれかけながら助け上げる。翌日、ひばりの王が礼にやってきて、ホモイに「貝の火」という宝珠を授けた。燃える火のように輝くその玉は、持ち主が正しくあるかぎり美しく光り、心が濁れば曇るのだという。お父さんは「そのうち曇るかもしれない、そうしたら注意しなさい」と言い聞かせる。ところが玉を手にしたホモイは、みるみる変わっていった。森の獣たちがへつらいに来るのを当然と思い、狐にそそのかされてひばりの巣を襲う手伝いをし、モグラを罰し、リスの一家をいじめる。玉はそのたびに濁り、ひびを走らせながらも、翌朝には不思議に元へ戻った。だが六日目の朝、ついに黒く濁りきった貝の火は、鋭くカチッと鳴って二つに割れ、パチパチと音を立てて煙のように砕け散る。粉が目に入ったホモイは、そのまま光を失った。砕けたかけらはやがてまた組み合わさり、もとの貝の火となって窓から飛び去っていった。あざ笑って去るふくろう。泣きつづける母。腕を組んでいたお父さんは、ホモイの背をたたいて言う。「泣くな。こんなことはどこにもあるのだ。それをよくわかったお前は、いちばんさいわいなのだ」。
登場人物
- ホモイ ひばりの子を助けて貝の火を授かる子兎
- ホモイのお父さん・お母さん 息子の変化を案じる
- ひばりの王 礼に貝の火を届ける
- 狐 ホモイをそそのかす
冒頭部(原文より)
今は兎たちは、みんなみじかい茶色の着物です。 野原の草はきらきら光り、あちこちの樺の木は白い花をつけました。 実に野原はいいにおいでいっぱいです。 子兎のホモイは、悦んでぴんぴん踊りながら申しました。 「ふん、いいにおいだなあ。うまいぞ、うまいぞ、鈴蘭なんかまるでパリパリだ」
「貝の火」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
「泣くな。こんなことはどこにもあるのだ。それをよくわかったお前は、いちばんさいわいなのだ。目はきっとまたよくなる。お父さんがよくしてやるから。な。泣くな」 窓の外では霧が晴れて鈴蘭の葉がきらきら光り、つりがねそうは、 「カン、カン、カンカエコ、カンコカンコカン」と朝の鐘を高く鳴らしました。
「貝の火」宮沢賢治(青空文庫)
原文を読む
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