怪談女の輪(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
古屋敷の夜に響く音
- 怪奇
- 文字数
- 3,716字
- 読了目安
- 約7分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
泉鏡花の短編。十七歳の秋、語り手が住み込んでいた塾の古い屋敷で起きた不思議な音と、高熱の夜に襲った恐怖体験を回想する。実話風の一人称で、短い中に怪異の場面を畳みかける。明治33年(1900)2月の成立。
あらすじ
地方の古い士族屋敷を使った塾に住み込む十七の語り手は、ある秋の夕暮れ、貸本の小説をこっそり読んでいると、障子に礫のような音がぱらぱらと降るのを聞く。塾の細君や臆病な塾生と息をひそめて過ごすが、帰宅した教師は何も知らず、音もやがて止んだ。数日後、熱を出して寝込んだ語り手は、足音が枕元に近づく気配に襲われ、這うように座敷を抜けて逃げる。奥の部屋の壁を押し開けると、二十人あまりの女が輪になって座っており、一斉に振り返って笑い声をあげた。背後から白い女の脚が迫り、引き込まれそうになった瞬間に我に返ると、元の寝床の上だった。語り手は病が治るとすぐに塾を去った。屋敷のあたりは封建の頃から女に不幸の絶えない場所だったと、後で聞いたという。
登場人物
- 語り手 十七歳の塾生
- 教師と細君 塾の主人夫婦。細君は乳飲み子を抱えている
- 山田 二階に住む臆病な塾生
冒頭部(原文より)
枕に就いたのは黄昏の頃、之を逢魔が時、雀色時などといふ一日の内人間の影法師が一番ぼんやりとする時で、五時から六時の間に起つたこと、私が十七の秋のはじめ。
「怪談女の輪」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
地方でも其界隈は、封建の頃極めて風の惡い士町で、妙齡の婦人の此處へ連込まれたもの、また通懸つたもの、況して腰元妾奉公になど行つたものの生きて歸つた例はない、とあとで聞いた。殊に件の邸に就いては、種々の話があるが、却つて拵事じみるからいふまい。 教師は其あとで、嬰兒が夜泣をして堪へられないといふことで直に餘所へ越した。幾度も住人が變つて、今度のは久しく住んで居るさうである。
「怪談女の輪」泉鏡花(青空文庫)
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