食魔(岡本かの子)のあらすじ・登場人物
食に取り憑かれた男
- 心理
- 文字数
- 36,747字
- 読了目安
- 約1時間13分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
岡本かの子の短篇。料理教師の鼈四郎を主人公に、食への異様な執着と、美と死についての思索を描く。かの子の食通ぶりと、人間の業を見つめる視点が結びついた作品として知られる。
あらすじ
菊萵苣、つまりアンディーヴを姉娘のお千代が水洗いして台の上に置く。素人の家にしては道具の揃った料理部屋で、若い料理教師の鼈四郎は椅子に踏み返り、煙草の手を止めて戸外の物音を聞いている。姉娘や妹娘の動きを見ながら、鼈四郎の食への探求は続く。物語は、京都時代の青年期の回想に及び、与四郎と戯れに呼ばれた美少年の姿、檜垣の主人の死、芸術と味についての思索へと広がってゆく。終わり近く、鼈四郎の瞼には今まで見たことのない露が一粒光る。
冒頭部(原文より)
菊萵苣と和名はついているが、原名のアンディーヴと呼ぶ方が食通の間には通りがよいようである。その蔬菜が姉娘のお千代の手で水洗いされ笊で水を切って部屋のまん中の台俎板の上に置かれた。 素人の家にしては道具万端整っている料理部屋である。ただ少し手狭なようだ。
「食魔」岡本かの子(青空文庫)
末尾部(原文より)
「逸子、済まないが、仲通りの伊豆庄を起して、鮟鱇の肝か、もし皮剥の肝が取ってあるようだったら、その肝を貰って来て呉れ、先生が欲しいといえばきっと、呉れるから――」 珍しく丁寧に頼んだ。はいはいと寝惚け声で答えて、あたふた逸子が出て行く足音を聞きながら、鼈四郎は焜炉に炭を継ぎ足した。傾ける顔に五十燭の球の光が当るとき、鼈四郎の瞼には今まで見たことの無い露が一粒光った。
「食魔」岡本かの子(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。