蔦の門(岡本かの子)のあらすじ・登場人物
蔦の芽をめぐる小さな争い
- 家族
- 文字数
- 7,359字
- 読了目安
- 約15分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
岡本かの子の短篇。家の門に茂る蔦をめぐって、老婢のまきと近所の少女ひろ子が小さな争いを重ねる様子を、ユーモアを交えて描く。日常の小事件の中に、人間の情の機微が見える。
あらすじ
私の住む家の門には、不思議に蔦がある。引っ越しても、かつて住んだ家にも蔦があり、蔦の門には縁があると語り手は思う。ある日、蔦の芽が子供たちに摘まれる事件が起こり、老婢のまきは神経質になって「また、ひろ子のやつが」と飛び出していく。やがて子供たちは別の遊び場へ移り、まきは飛び出す相手を失ってしょんぼりする。まきは遠くの茶店へ茶を買いに行くが、そこは敵役の少女の家であった。結びでは、年月が過ぎ、立派に成長したひろ子が戦時の任務に赴く場面が置かれる。
冒頭部(原文より)
私の住む家の門には不思議に蔦がある。今の家もさうであるし、越して来る前の芝、白金の家もさうであつた。もつともその前の芝、今里の家と、青山南町の家とには無かつたが、その前にゐた青山隠田の家には矢張り蔦があつた。都会の西、南部、赤坂と芝とを住み歴る数回のうちに三ヶ所もそれがあるとすれば、蔦の門には余程縁のある私である。
「蔦の門」岡本かの子(青空文庫)
末尾部(原文より)
蔦の茂葉の真盛りの時分に北支事変が始まつて、それが金朱のいろに彩られるころます/\皇軍の戦勝は報じ越される。 もう立派に一人前になつてゐたひろ子は、日常の訓練が役立つて、まるで隣へ招ばれるやうに、あつさり「では、をばさん行つて来るわ」とまきに言つて征地の任務に赴いた。 「たいしたものだ」まきは首を振つて感じてゐた。
「蔦の門」岡本かの子(青空文庫)
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