鑑定(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
灯を消せば美人に見える
- 風刺
- 文字数
- 1,834字
- 読了目安
- 約4分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
末尾に明治44年(1911年)3月と記された掌編。漢文調の言い回しを交えながら、牛切りの職人とその女房をめぐる村の笑い話を、会話中心にテンポよく語る。容貌に恵まれない妻が、夜の暗がりでは絶世の美人に見えるという奇妙な噂をめぐり、村の若者たちが次々に試しに行くという展開が愉快。鏡花の諧謔味がよく出た小品。
あらすじ
牛屋の牛切りの若者が、見た目のたいへん醜い女房をもらった。村の友人たちは、鬼に食われないかと案じる。ところが本人は、灯を暗くすると妻が月明かりのように白く、蘭麝の香りまで漂う絶世の美人に見えて目が覚めるのだと、うれしそうに話す。信じない仲間が一人ずつ夜の小屋を訪ね、戻って「違いなし」と頭を下げ、評判は村じゅうに広がる。ある夜、小屋の暗がりから、おまえを不憫に思って女の姿を変えてやったのに何事かと叱る声がして、仙人らしい姿が雲の中へ去る。残された妻の素顔は見るに耐えず、牛切りは田圃へ逃げ出した。
登場人物
- 牛切りの若者 醜い女房を持つ牛屋の職人
- 女房 夜の暗がりでは美人に見えると噂される
- 村の若者たち 噂を確かめに夜の小屋を訪ねる
冒頭部(原文より)
牛屋の手間取、牛切りの若いもの、一婦を娶る、と云ふのがはじまり。漸と女房にありついたは見つけものであるが、其の婦(奇醜)とある。たゞ醜いのさへ、奇醜は弱つた、何も醜を奇がるに當らぬ。 本文に謂つて曰く、蓬髮歴齒睇鼻深目、お互に熟字でだけお知己の、沈魚落雁閉月羞花の裏を行つて、これぢや縮毛の亂杭齒、鼻ひしやげの、どんぐり目で、面疱が一面、いや、其の色の黒い事、ばかりで無い。
「鑑定」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
と膠もなく、一喝をしたかと思ふと、仙人どのと覺しき姿、窓から飛んで雲の中、山へ上らせたまひけり。 時に其の帷中の婦を見れば、宛としておでこの醜態、明白に成畢ぬ。 屠者其の餘りの醜さに、一夜も側に我慢が成らず、田圃をすた/\逃げたとかや。
「鑑定」泉鏡花(青空文庫)
原文を読む
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