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余興(森鴎外)のあらすじ・登場人物

浪花節の余興と自尊心

  • 風刺

森鴎外 1915年(大正4年)8月 「アルス」

文字数
3,768字
読了目安
約8分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

『アルス』1915年8月号に載った短編。同郷人の懇親会に出た「私」が、余興の浪花節を聞かされたあと、宴席の芸者の何気ない一言に心を揺らす。浪花節を愛好する陸軍少将や、柳橋の芸者たちが登場する。取り澄ました自意識を、軽い皮肉をまじえて内省的に描くユーモラスな小品。

あらすじ

暑い夕方、「私」は久しぶりに柳橋の亀清で開かれた同郷人の懇親会に出る。顔見知りは少なく、余興の目録には、浪花節語りの辟邪軒秋水が赤穂義士討入を演じると貼り出してある。幹事の陸軍少将畑は浪花節の愛好者で、同郷の青年を警醒するために秋水を招いたのだった。私は、信仰のない身には耳障りな節と三味線の雑音に耐え、死を決して堅く坐り、義士が吉良の首を取るまで聞き終えて拍手する。廊下では顔見知りの年増芸者鼠頭魚に「大変ね」と言われ、宴席では若い芸者が、軽侮と憐憫を湛えた目で「面白かったでしょう」と酌をしようとする。私は自尊心を傷つけられて思わず猪口を引くが、すぐに自分の未熟さを省みる。人にどう思われようとそのままにしておけばよく、自分の感情は自分のものだと思う一方で、愛するものを公然と愛する人には劣ると感じる。顔を上げると、若い芸者はもういなかった。そこへ鼠頭魚が来て、塞ぎ込んでいる私に、余興に中てられたのかと尋ねる。私は、つい馬鹿な事を考えていたのだと答えて、杯を一息に干した。

登場人物

冒頭部(原文より)

同郷人の懇親会があると云うので、久し振りに柳橋の亀清に往った。 暑い日の夕方である。門から玄関までの間に敷き詰めた御影石の上には、一面の打水がしてあって、門の内外には人力車がもうきっしり置き列べてある。

「余興」森鴎外(青空文庫)

末尾部(原文より)

「どうなすったの。さっきからひどく塞ぎ込んでいらっしゃるじゃありませんか。余興に中てられなすったのじゃなくって」 「なに。大ちがいだ。つい馬鹿な事を考えていたもんだから」 こう云って私は杯を一息に干した。

「余興」森鴎外(青空文庫)

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