アプリで読む

無料・登録不要

年とったカシワの木のさいごの夢(アンデルセン)のあらすじ・登場人物

三百六十五年の最後の夢

  • 幻想
  • 翻訳

アンデルセン 訳者 矢崎源九郎 

文字数
7,186字
読了目安
約14分
表記
新字新仮名

この作品について

アンデルセンが1858年3月に発表した童話(原題 Det gamle Egetræes sidste Drøm)を、北欧文学者の矢崎源九郎が訳したもの(新潮文庫『マッチ売りの少女 アンデルセン童話集Ⅲ』)。副題にあたる「クリスマスのお話」のとおり、クリスマスの前夜を舞台にした作品。一日で死ぬカゲロウと、三百六十五年を生きたカシワの木の対話から、時間の長さを問う寓話が始まり、冬の眠りの中でカシワの木が見る夢が、物語の中心になる。短い中に、自然の描写と信仰の歌が重なる一篇。

あらすじ

海を見はるかす崖の森に、三百六十五歳になるカシワの木が立っていた。夏の日、一日きりの命のカゲロウに、カシワの木は、おまえの命はなんと短いのだろうと同情するが、カゲロウは、こんなに美しい世界で幸福だと答え、同じことを繰り返して眠るように死んでいく。やがて冬が来て、カシワの木は葉を落として長い眠りにつく。クリスマスの前夜、カシワの木は夢を見る。これまでの長い年月の出来事が行列のように目の前を過ぎ、木は力がみなぎってぐんぐん伸び、雲の上に出て、光り輝く星々を見る。まわりの木も草も花も、小さなものも大きなものも、みんな自分と一緒に伸びていき、木は、すべてのものと一緒に光の中へ飛んでいけると喜ぶ。ところが、その夢を見ているあいだに、はげしい嵐が海と陸を襲い、カシワの木は根こそぎ倒れる。三百六十五年の一生は、カゲロウの一日と同じだった。クリスマスの朝、船乗りたちは、目じるしだった木が見えなくなったと嘆き、船の上からは賛美歌が聞こえてくる。

冒頭部(原文より)

 ひろいひろい海にむかった、きゅうな海岸の上に、森があります。その森の中に、それはそれは年とった、一本のカシワの木が立っていました。年は、ちょうど、三百六十五になります。でも、こんなに長い年月も、この木にとっては、わたしたち人間の、三百六十五日ぐらいにしかあたりません。  わたしたちは、昼のあいだは起きていて、夜になると眠ります。眠っているときに、夢を見ます。ところが、木は、ちがいます。木は、一年のうち、春と夏と秋のあいだは起きていて、冬になってはじめて、眠るのです。冬が、木の眠るときなのです。ですから、冬は、春・夏・秋という、長い長い昼のあとにくる、夜みたいなものです。

「年とったカシワの木のさいごの夢」アンデルセン(青空文庫)

末尾部(原文より)

 カシワの木は、海べで、雪のふとんの上に、長々と、横になっていました。でも、いま、みじかいけれども、こんなに心のこもった言葉を、お別れにうけたのです。  船の上からは、讃美歌が聞えてきました。クリスマスのよろこびをうたい、キリストによる人間の魂のすくいと、かぎりない命とをたたえる讃美歌です。 うたえ、高らかに、世の人よ。 ハレルヤ。主は生まれたまいぬ。 このよろこびぞ、たぐいなし。 ハレルヤ、ハレルヤ。  なつかしい讃美歌は、空にひびきわたりました。船の上の人たちは、みんな、この歌をうたい、お祈りをしたおかげで、魂が高められたように感じました。ちょうど、クリスマスの前夜に、年とったカシワの木が、さいごの、いちばん美しい夢のなかで、高められていったようにです。

「年とったカシワの木のさいごの夢」アンデルセン(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品