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葛飾砂子(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

川に浮かぶ形見の浴衣

  • 心理
  • 恋愛

泉鏡花 1900年(明治33年)11月

文字数
18,665字
読了目安
約37分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

泉鏡花の中編。深川を舞台に、若くして亡くなった名題俳優を慕う三味線屋の娘と、川に流れる彼女を助ける老船頭、看護婦のお縫の姿を、七つの小見出しをもつ構成で描く。川筋の風景と、題目を唱える船の声が印象に残る。明治33年(1900)11月の成立。

あらすじ

深川の三味線屋の一人娘、菊枝は、病で早世した名題俳優の尾上橘之助の贔屓だった。秋の夜、近所の看護婦お縫の家へ遊びに出たきり戻らず、迎えに出た小僧の弥吉が探すがどこにもいない。お縫は柳行李の中を調べ、橘之助の看病のときに貰い受けた形見の浴衣がなくなっているのに気づいて青ざめる。そのころ、毎夜、石碑のある川筋で題目を唱えながら船を漕ぐ老船頭の七兵衛が、川に浮かぶ若い女を引き上げる。菊枝は形見の浴衣をまとって身を投げたのだった。七兵衛は菊枝を自分の家で介抱し、騒ぎ立てず、よく考えて身の振り方を決めるようにと言い置いて仕事に出る。のち菊枝は両親に許され、お縫とともに蓬莱橋から浴衣を流して供養し、明るさを取り戻す。

登場人物

冒頭部(原文より)

 先年尾上家の養子で橘之助といった名題俳優が、年紀二十有五に満たず、肺を煩い、余り胸が痛いから白菊の露が飲みたいという意味の辞世の句を残して儚うなり、贔屓の人々は謂うまでもなく、見巧者をはじめ、芸人の仲間にも、あわれ梨園の眺め唯一の、白百合一つ萎んだりと、声を上げて惜しみ悼まれたほどのことである。

「葛飾砂子」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

 菊枝は活々とした女になったが、以前から身に添えていた、菊五郎格子の帯揚に入れた写真が一枚、それに朋輩の女から、橘之助の病気見舞を紅筆で書いて寄越したふみとは、その名の菊の枝に結んで、今年は二十。

「葛飾砂子」泉鏡花(青空文庫)

名文

先年尾上家の養子で橘之助といった名題俳優が、年紀二十有五に満たず、肺を煩い、余り胸が痛いから白菊の露が飲みたいという意味の辞世の句を残して儚うなり、贔屓の人々は謂うまでもなく、見巧者をはじめ、芸人の仲間にも、あわれ梨園の眺め唯一の、白百合一つ萎んだりと、声を上げて惜しみ悼まれたほどのことである。

冒頭の一文。若くして世を去った名優の死から語り起こし、その面影を慕う娘の物語へとつないでいく。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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