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うつせみ(樋口一葉)のあらすじ・登場人物

夏の貸家に暮らす人々

  • 恋愛
  • 心理

樋口一葉 1895年(明治28年)8月 「読売新聞」

文字数
8,063字
読了目安
約16分
表記
新字旧仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

1895年(明治28年)8月27日から31日まで、『読売新聞』に掲載された樋口一葉の短編小説。小石川の植物園に近い貸家へ、病む若い娘を連れた一行が越してくる。家を借りる男の曖昧な返答や、人目を避けるような引越しの様子を、周囲から見た不思議な出来事として語り始める。静かな住まいを求める人々の事情と、娘を世話する家族や使用人の姿が、少しずつ描かれていく。風通しのよい部屋、庭の木立、夏の日差しといった景色が、家の内側の不安と重なる。事情をすべて説明するのではなく、会話やうわさ、見える振る舞いを重ねて、その人に近づこうとする文章に特色がある。娘の苦しみを外からどう受け止めるか、家族の気遣いに何が含まれるかを、短い場面の連なりから考えさせる作品である。病の原因を一つに決めず、語られたことと推測との隔たりにも目を向けたい。

あらすじ

小石川の植物園にほど近い、静かな貸家に、素性の知れぬ一家が越してくる。世話好きだが要領を得ない主人、老いた両親らしき二人、そして透きとおるように蒼白い、十八ばかりの美しい病身の娘・雪子が暮らし始める。雪子は植村という男と将来を誓い合った仲であったが、家の事情でその恋は許されず、破談となった心痛から次第に心を病んでいく。夏の暑さが募るにつれて雪子の乱心はいよいよ激しくなり、家族の呼びかけにも応えず、ただ「知りませぬ」と泣くばかりになる。八月の半ば、狂乱はさらに募り、幾晩も眠らぬまま「植村に逢いました」とうわ言のように繰り返す雪子の姿に、家族はなすすべもなく寄り添うほかなかった。

登場人物

冒頭部(原文より)

家の間数は三畳敷の玄関までを入れて五間、手狭なれども北南吹とほしの風入りよく、庭は広々として植込の木立も茂ければ、夏の住居にうつてつけと見えて、場処も小石川の植物園にちかく物静なれば、少しの不便を疵にして他には申旨のなき貸家ありけり。

「うつせみ」樋口一葉(青空文庫)

末尾部(原文より)

いつぞは正気に復りて夢のさめたる如く、父様母様といふ折の有りもやすと覚束なくも一日二日と待たれぬ、空蝉はからを見つつもなぐさめつ、あはれ門なる柳に秋風のおと聞えずもがな。

「うつせみ」樋口一葉(青空文庫)

原文を読む

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