革トランク(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
廊下のない学校の設計者
- 風刺
- 文字数
- 3,252字
- 読了目安
- 約7分
- 表記
- 新字旧仮名
この作品について
宮沢賢治の短い童話。楢岡の工学校をまぐれで卒業した斉藤平太が、村で請け負った建物に、肝心なものが欠けていた。東京へ逃げた平太の浮き沈みを、「こんなことは実に稀れです」という合いの手をはさんで語る、とぼけた笑いの一編。結末の大トランクのくだりに、見栄と悲しみがにじむ。
あらすじ
楢岡の工学校をまぐれ当たりで卒業した斉藤平太は、家の門に建築図案設計工事請負の看板をかけ、村の消防小屋兼相談所と分教場を請け負う。大工たちは平太が来るとなぜか妙な顔をして下ばかり向く。ところが完成してみると、分教場には廊下が、消防小屋には梯子がなかった。平太は三円を持って東京へ逃げ、撒水夫を経て建築現場の監督になり、「エレベータとエスカレータの研究のため」と実家へ葉書を出し続ける。母が病気になったとの電報で帰ることになり、二十円の大きな革トランクを買って、要らない図面を詰める。故郷の渡し場でトランクは子供らにめずらしがられ、船頭や下男に迎えられるが、平太は悲しくて泣きそうになる。村長の父は、そのトランクを見て苦笑いする。
登場人物
- 斉藤平太 楢岡工学校を出た設計請負人
- 村長 平太の父
- 大工たち 平太の設計図で建てた職人
- 下男 平太の家の使用人
冒頭部(原文より)
斉藤平太は、その春、楢岡の町に出て、中学校と農学校、工学校の入学試験を受けました。三つとも駄目だと思ってゐましたら、どうしたわけか、まぐれあたりのやうに工学校だけ及第しました。一年と二年とはどうやら無事で、算盤の下手な担任教師が斉藤平大の通信簿の点数の勘定を間違った為に首尾よく卒業いたしました。 (こんなことは実にまれです。) 卒業するとすぐ家へ戻されました。家は農業でお父さんは村長でしたが平太はお父さんの賛成によって、家の門の処に建築図案設計工事請負といふ看板をかけました。
「革トランク」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
それは平太の家の下男でした。平太はだまって眼をパチパチさせながらトランクを渡しました。下男はまるでひどく気が立ってその大きな革トランクをしょひました。 それから二人はうちの方へ蚊のくんくん鳴く桑畑の中を歩きました。 二人が大きな路に出て少し行ったとき、村長さんも丁度役場から帰った処でうしろの方から来ましたがその大トランクを見てにが笑ひをしました。
「革トランク」宮沢賢治(青空文庫)
原文を読む
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