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影を踏まれた女(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

十三夜、影を踏まれた娘

  • 怪奇

岡本綺堂 1925年(大正14年)9月 「講談倶楽部」

文字数
11,612字
読了目安
約23分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂が1925年(大正14年)9月の「講談倶楽部」に発表した怪談。語り手の「Y君」が十三夜にちなむ話として語りはじめる趣向をとる。月夜に子どもたちが「影や道陸神、十三夜のぼた餅」と歌いながら互いの影を踏み合った江戸の遊びと、影を踏まれると寿命が縮むという俗信を入口に、嘉永元年の芝の糸屋の娘おせきが、通りがかりに影を踏まれたことから自分の影におびえはじめる姿を追う。両親や許婚の若者の困惑、怪しげな行者の祈祷など、江戸の町家の暮らしを淡々と描き込み、出来事に説明をつけない綺堂らしい語り口で怪異を浮かび上がらせる。

あらすじ

Y君が十三夜にちなんで語る話。嘉永元年九月十二日の宵、芝柴井町の糸屋・近江屋の娘おせき(十七)は、親類の家からの帰り道、宇田川町で「影や道陸神」を歌って遊ぶ子どもたちに取り囲まれ、月に映る自分の影をさんざんに踏まれる。影を踏まれると寿命が縮むという言い伝えを信じるおせきは、両親に笑われても不安をぬぐえず、月夜の外出を避けるようになった。師走の十三日の月夜、許婚の要次郎に送られて帰る途中、今度は二匹の犬が彼女の影の上で狂いまわる。それからおせきは日の光も燈火も恐れて奥の暗い部屋に閉じこもり、生きた幽霊のように痩せ衰えていく。困り果てた両親は、要次郎が狐使いと罵る下谷の行者を頼った。行者から授かった蝋燭で娘の影を照らしても、そのときは何も変わったものは映らない。行者はさらに一本の蝋燭を渡し、百日目の夜に照らしてみよと言う。その百日目は、ちょうど影を踏まれて一年目の九月十二日にあたっていた。その夜、壁に映ったのは骸骨の影だった。翌る十三夜、要次郎は月を恐れぬ習いをつけさせようと、珍しく素直に出てきたおせきを連れ出す。子どもたちが「お化けだ」と叫んで逃げ散り、振り返った要次郎は、自分の影と並んで地に落ちる骸骨の影を見て、思わずおせきの手を放して逃げ帰った。両親と駆けつけると、おせきは通りがかりの侍に袈裟斬りにされて往来に倒れていた。侍もまた怪しい影を見て斬ったのか、真相は誰にも分からないまま、奇怪な出来事として世に伝えられた。

登場人物

冒頭部(原文より)

 Y君は語る。  先刻も十三夜のお話が出たが、わたしも十三夜に縁のある不思議な話を知っている。それは影を踏まれたということである。

「影を踏まれた女」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

 その注進に驚かされて、おせきの両親は要次郎と一緒にそこへ駈けつけてみると、おせきは右の肩から袈裟斬りに斬られて往来のまん中に倒れていた。  近所の人の話によると、要次郎が駈け出したあとへ一人の侍が通りかかって、いきなり刀をぬいておせきを斬り倒して立ち去ったというのであった。宵の口といい、この月夜に辻斬りでもあるまい。かの侍も地にうつる怪しい影をみて、たちまちに斬り倒してしまったのかも知れない。  おせきが自分の影を恐れていたのは、こういうことになる前兆であったかと、近江屋の親たちは嘆いた。行者の奴が狐をつけてこんな不思議を見せたのだと、要次郎は憤った。しかし誰にも確かな説明の出来るはずはなかった。ただこんな奇怪な出来事があったとして、世間に伝えられたに過ぎなかった。

「影を踏まれた女」岡本綺堂(青空文庫)

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