怨霊借用(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
祭の夜に現れた小按摩
- 怪奇
- 風刺
- 文字数
- 18,804字
- 読了目安
- 約38分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 静岡県
この作品について
泉鏡花の晩年の中編。温泉宿に泊まった夫婦が、土地の按摩から、淵に身を投げた盲目の小按摩の話を聞く。折しも祭の夜、その小按摩に似た仮装の者が現れるという噂が立ち、仮装行列の賑わいを背景に騒動が起こる。作中には作者自身の戯曲「山吹」の名も出てくる。大正14年(1925)3月の成立。
あらすじ
秋の末、銀行員の欣七郎と若い妻お桂は、温泉宿の井菊屋に泊まり、按摩の謙斎から療治を受ける。謙斎は、土地の釜ヶ淵に身を投げた盲の小按摩の小一の話を語る。小一は、宿に逗留する大島屋の女主人の肩を揉むうち、そばにいた美しい娘のお桂に心を寄せていたが、お桂が提灯に火をともしてやった夜、淵に身を投げたという。折しも町は祭で、夜泣松の下に小一そっくりの仮装の者が現れたという噂が立つ。夫婦が確かめに行くと、相手は笛を吹くばかりで何を問われても答えない。お桂は射的店の幽霊の人形を借り、小按摩を仮装行列の中へ連れ込んで厄介払いしようと計る。行列の最中に幽霊は風にさらわれて消え、小按摩の姿も人混みに紛れる。翌朝、お桂は夫を待たせて山の歓喜天の御堂へ登るが、荒れた小屋のそばで幽霊の人形をくわえた犬に襲われ、小按摩に出くわして気を失う。駆けつけた欣七郎が目にしたのは、酒の匂いのなか夫人にすがりつく男であった。小一に仮装していたのは、山の麓に一人で暮らす堂守であった。
登場人物
- お桂 下町の大店の娘で、今は銀行員の妻
- 欣七郎 お桂の夫。高等商業出の銀行員
- 謙斎 温泉宿に出入りする饒舌な按摩
- 小一 釜ヶ淵に身を投げたという盲目の小按摩
- 半助 宿の手代
冒頭部(原文より)
婦人は、座の傍に人気のまるでない時、ひとりでは按摩を取らないが可いと、昔気質の誰でもそう云う。上はそうまでもない。あの下の事を言うのである。閨では別段に注意を要するだろう。以前は影絵、うつし絵などでは、巫山戯たその光景を見せたそうで。――御新姐さん、……奥さま。……さ、お横に、とこれから腰を揉むのだが、横にもすれば、俯向にもする、一つくるりと返して、ふわりと柔くまた横にもしよう。水々しい魚は、真綿、羽二重の俎に寝て、術者はまな箸を持たない料理人である。
「怨霊借用」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
読む方は、筆者が最初に言ったある場合を、ごく内端に想像さるるが可い。 小一に仮装したのは、この山の麓に、井菊屋の畠の畑つくりの老僕と日頃懇意な、一人棲の堂守であった。
「怨霊借用」泉鏡花(青空文庫)
原文を読む
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