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菊あわせ(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

菊細工の僧と幻の女

  • 幻想
  • 恋愛

泉鏡花 1932年(昭和7年)1月 「文藝春秋」

文字数
18,178字
読了目安
約36分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 石川県

この作品について

昭和7年(1932年)1月、「文藝春秋」に発表された。故郷の旅宿に滞在する画工のもとへ、四十年ぶりに旧友の僧が菊細工の手土産を持って訪ねてくる。故郷の町の記憶、背に子をおぶった美しい女の幻、伊豆の湯宿の長廊下での怪異と、ふたりの対話のなかで過去と現実の境目がだんだん揺らいでいく。会話を中心にした長い語りが、鏡花晩年の円熟した文体で重ねられる。

あらすじ

故郷に滞在中の画工穂坂一車のもとへ、氏神の稲荷堂の裏に住むという老僧の香山宗参が、約四十年ぶりに訪ねてくる。幼なじみの宗参は菊細工の人形を手土産に持参しており、二人は町の思い出を語り合う。宗参は、幼い穂坂が町の娘お奇駒に背負われて二階から落ちたとき、母の手を離れた仏前の菊が枕になって助かった話をする。穂坂は、浅草観音の菊供養で背に子をおぶった美しい女に出会って以来、その姿を追ってきたと打ち明ける。七年後に再びその女を見かけ、昨年は伊豆の湯宿の長い縁側で行き違い、抱きつこうとして倒れ、騒ぎになった。話を聞いた宗参は、再び煩うといけないと、菊人形を見せずに包みを持って去る。翌朝、社務所の神職から宗参は黒姫山へ紅葉を見に行ったと聞かされ、穂坂は夜の急行で追うが、黒姫山の麓の駅で降り、そのまま立ちつくす。

登場人物

冒頭部(原文より)

「蟹です、あのすくすくと刺のある。……あれは、東京では、まだ珍らしいのですが、魚市をあるいていて、鮒、鰡など、潟魚をぴちゃぴちゃ刎ねさせながら売っているのと、おし合って……その茨蟹が薄暮方の焚火のように目についたものですから、つれの婦ども、家内と、もう一人、親類の娘をつれております。

「菊あわせ」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

 その手が、燗をつけてくれた魔法瓶、さかなにとて、膳のをへずった女房の胡桃にも、且つ心を取られた、一所にたべようと、今しがた買った姫上川の鮎の熟鮓にも、恥ずべし、涙ぐましい思をしつつ、その谿谷をもみじの中へ入って行く、残ンの桔梗と、うら寂しい刈萱のような、二人の姿の、窓あかりに、暗くせまったのを見つつ、乗放して下りた、おなじ処に、しばらく、とぼんと踞んでいた。  しかし、峰を攀じ、谷を越えて、大宗参の菊細工を見ることが出来たら、或は、絵のよい題材を得ようも知れない。

「菊あわせ」泉鏡花(青空文庫)

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