幸福な一家(アンデルセン)のあらすじ・登場人物
スカンポの森の幸せ
- 風刺
- 翻訳
- 文字数
- 4,308字
- 読了目安
- 約9分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
アンデルセンが1847年に発表した童話(原題「Den lykkelige Familie」)を、矢崎源九郎が訳したもの(新潮文庫『人魚の姫 アンデルセン童話集Ⅰ』)。荒れた庭に茂る大きなスカンポの葉の下で、年とった二ひきの白いカタツムリが、料理されて銀のお皿にのせられることをいちばんの名誉と信じて暮らす話。小さな世界で満ち足りて生きる一家の姿を、のどかな笑いとともに描く。
あらすじ
国でいちばん大きな青い葉はスカンポの葉で、カタツムリの大好物だった。むかし、お屋敷の人がカタツムリを料理して食べたので、スカンポは畑にまかれたが、今ではカタツムリは死にたえ、古い庭はスカンポの森になっている。そこに二ひきの年とった白いカタツムリが住み、自分たちはお屋敷で料理されて銀のお皿にのせられる特別な身の上だと信じている。子どもがないので、ふつうのカタツムリの子を育て、その子の嫁をアリやブヨに探してもらって、スグリの茂みにいた小さなカタツムリの娘を迎える。結婚式のあと、年よりたちはスカンポの森をゆずり、家の中にもぐって二度と出てこない。若い夫婦には子が大ぜい生まれるが、料理されることも銀のお皿にのせられることもなく、みんなはお屋敷はこわれ、世の中の人は死んだのだと決めこんで、しあわせに暮らす。
登場人物
- 年とった白いカタツムリの夫婦 料理されて銀のお皿にのることにあこがれる
- 養子のカタツムリ ふつうのカタツムリの子
- 小さなカタツムリの娘 スグリの茂みから迎えられた嫁
- アリ・ブヨ 嫁さがしを手伝う
冒頭部(原文より)
この国でいちばん大きな青い葉といえば、それは、スカンポの葉にちがいありません。その葉を取って、子供がおなかの上につければ、ちょうど前掛けのようになります。それから、頭の上にのせると、雨が降っているときには、雨がさのかわりになります。この葉は、なにしろ、ものすごく大きいのですから。 スカンポというのは、一本だけで生えているということはありません。一本生えているところには、きまって、幾つも幾つも生えているものです。そのありさまは、たいへんきれいです。そして、この美しい葉は、カタツムリの大好きな食べ物なのです。むかし、身分の高い人たちが、よいお料理につかった、大きな白いカタツムリは、スカンポの葉を食べて、「フン、こいつはうまいぞ」と、言ったものでした。なぜって、カタツムリは、ほんとうにおいしいと思ったからです。カタツムリは、スカンポの葉を食べて生きていました。ですから、スカンポの種が、畑にまかれたのです。
「幸福な一家」アンデルセン(青空文庫)
末尾部(原文より)
話がおわると、年よりのふたりは、めいめいの家の中へもぐりこんで、それからは、二度と出てきませんでした。そのまま、ふたりは眠ってしまったのです。若いカタツムリの夫婦は、スカンポの森をおさめました。そして、子供も大ぜい生れました。しかし、料理されることもなければ、銀のお皿にのせられることもありませんでした。それで、みんなは、お屋敷はこわれてしまい、世の中の人たちは、みんな死んでしまったのだ、ということにきめました。そして、だれひとり、それに反対する者がなかったのですから、それは、ほんとうのことにちがいありません。 雨はスカンポの葉をたたいて、たいこの音楽を聞かせてくれました。お日さまはキラキラかがやいて、スカンポの森を、美しい色にそめてくれました。みんなは、たいへんしあわせでした。そして、一家の者は、みんなしあわせでした。ほんとうに、そうだったのです。
「幸福な一家」アンデルセン(青空文庫)
原文を読む
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