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湖畔亭事件(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物

覗き見が解く湖畔の怪事件

  • ミステリ

江戸川乱歩 1926年(昭和元年)1月 「サンデー毎日」

文字数
69,370字
読了目安
約2時間19分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

江戸川乱歩が1926年(大正15年)、「サンデー毎日」に連載した長編。山中の湖のほとりの温泉宿で起きた、死体の消えた奇怪な殺人事件。五年を経てなお未解決のその「湖畔の怪事件」の真相を、ただ一人それを知る「私」が打ち明ける、という趣向で語られる。覗き見の趣味を持つ語り手を配した、乱歩初期の長編ミステリである。

あらすじ

H山中のA湖のほとりで、かつて世にも不思議な殺人事件が起きた。都の新聞が「A湖畔の怪事件」「死体の紛失」などと書き立てたその事件は、五年を経た今も未解決のまま。犯人はもちろん、奇怪なことに被害者さえもはっきりせず、警察はとうに匙を投げ、村人たちも忘れかけている。だが世界にただ二人、その真相を知る者がいる——その一人が「私」だ。覗き見の趣味を持つ「私」は、湖畔の温泉宿「湖畔亭」で、鏡を使ってひそかに他人の部屋をうかがううち、思いがけず殺人の一部始終を目撃してしまう。三造という男の死、消えた死体、贋造紙幣の疑い、そして河野と長吉という一組の恋人——複雑にからみ合った事情のために、「私」は長く沈黙を守ってきた。だが関係者が去った今、ようやく真相を語れる時が来た。とはいえ、その語りの果てには、「私」自身の胸に、ある重大な疑問が影を落とす。もし自分の想像が当たっているなら、憎むべき殺人者をゆえなく見逃したことになるのではないか——。覗き見という趣向を軸に据えた、乱歩初期の長編ミステリである。

登場人物

冒頭部(原文より)

 読者諸君は、先年H山中のA湖のほとりに起った、世にも不思議な殺人事件を、御記憶ではないでしょうか。片山里の出来事ながら、それは、都の諸新聞にも報道せられた程、異様な事件でありました。ある新聞は「A湖畔の怪事件」という様な見出しで、又ある新聞は「死体の紛失云々」という好奇的な見出しで、相当大きくこの事件を書き立てました。

「湖畔亭事件」江戸川乱歩(青空文庫)

末尾部(原文より)

 もし私の想像が当たっているとすれば、私はにくむべき殺人者を、ゆえなく見逃がしたことになるのです。でも、今はまだその疑いをあからさまにいうべき時機ではありません。河野は生きているのです。しかも、彼はお国のために海外に出稼ぎをしているのです。数年前に死んでしまったおろか者の三造の故に、何を好んで、今更犠牲者を出す必要がありましょう。

「湖畔亭事件」江戸川乱歩(青空文庫)

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