光籃(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
月影を削る簪の斧
- 幻想
- 文字数
- 5,442字
- 読了目安
- 約11分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
大正13年(1924年)5月、雑誌「苦楽」に発表された。盂蘭盆すぎの月夜、小流れで水をすくっていた田舎娘に、安来節の一座が声をかけたことから起こる不思議を描く。月の光を削って壁に十七夜の月を掛ける場面が、擬音と色彩に満ちた幻想的な絵として印象に残る。短いながら、月と水と女性が一つになった鏡花らしい小品。
あらすじ
盂蘭盆すぎの月夜、町外れの小流れで、田舎娘が笊で水をすくっては畚に移している。通りかかった安来節の一座の女太夫や座長は、鰌すくいかと笑うが、娘は『お月様の影を掬います』と答える。一座は娘を芸の見世物にしようと考え、船に誘って八葉潟へ出た。ところが空が曇って風雨が荒れ、一同は飯屋へ逃げ込む。停電の暗闇のなか、娘は船に置いた簪と畚を取ってきて、畚の中の光を壁に投げかける。簪は小さな斧になり、娘はその斧で光を削って、壁に十七夜の月を掛けた。娘は微笑んで姿を消した。以後、一座の女たちは同じ斧の簪をさして、夜ごと苦しむが、芸のないその娘だけが簪をさして無事だった。
登場人物
- 娘 小流れで月影をすくう田舎娘。正体は不明
- 女太夫 安来節の一座の年増
- 座長 娘を見世物にしようと誘う男
- 船頭 一座を潟へ運ぶ年配の男
冒頭部(原文より)
田舎の娘であらう。縞柄も分らない筒袖の古浴衣に、煮染めたやうな手拭を頬被りして、水の中に立つたのは。……それを其のまゝに見えるけれど、如何に奇を好めばと云つても、女の形に案山子を拵へるものはない。 盂蘭盆すぎの良い月であつた。
「光籃」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
「苦しい。」 唯一人……脛すらりと、色白く、面長な、目の涼しい、年紀十九で、唄もふしも何にも出来ない、総踊りの時、半裸体に蓑をつけて、櫂をついてまはるばかりのあはれな娘のみ、斧を簪して仔細ない。髪にきら/\と輝くきれいさ。
「光籃」泉鏡花(青空文庫)
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