蜘蛛となめくじと狸(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
蜘蛛となめくじと狸の競走
- 幻想
- 文字数
- 7,870字
- 読了目安
- 約16分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
蜘蛛となめくじと狸——三人はいずれも立派な「選手」だったが、何の競争をしていたのかは誰も知らない。それぞれが食らい、欺き、太っていくさまを描いた、宮沢賢治の初期童話。むごたらしいまでの誇張と滑稽さの底に、貪りへの徹底した戒めが横たわる。
あらすじ
蜘蛛と、銀色のなめくじと、顔を洗ったことのない狸——三人はみんな立派な選手でした。けれども一体何の選手だったのか、私はよく知りません。そう語り出されて、三人の伝記が順に語られる。赤い手長の蜘蛛は、森の入口の楢の木に飛ばされてきて、ひもじさをこらえて小さな網をかけた。かかった蚊をむさぼり、じわじわと網を広げ、やがて仲間や妻や子までも網にかけて肥え太ってゆく。銀色のなめくじは、慇懃な物腰で相手をだまし、蛙やとかげを「お友だち」と呼びながら、そのからだを溶かして呑みこんでいった。狸は「なまねこ、なまねこ」と念仏を唱えながら、堪忍が大事だと説きつつ、兎や狼をむしゃむしゃ食べてしまう。誰もが自分だけは正しいつもりでいる。そして三人はいずれも死ぬ。蜘蛛はとけて流れ、なめくじはペロリとやられ、狸はからだの中に泥や水がたまって地球儀のようにまんまるにふくれ、真っ黒になって熱にうかされた。「うう、こわいこわい。おれは地獄行きのマラソンをやったのだ。うう、切ない」——そう言いながら、とうとう焦げて死んでしまった。なるほどそうしてみると、三人とも地獄行きのマラソン競争をしていたのです。
登場人物
- 赤い手長の蜘蛛 網を広げて肥え太る
- 銀色のなめくじ 慇懃に相手を溶かして呑む
- 狸 念仏を唱えながら食らう
冒頭部(原文より)
蜘蛛と、銀色のなめくじとそれから顔を洗ったことのない狸とはみんな立派な選手でした。 けれども一体何の選手だったのか私はよく知りません。 山猫が申しましたが三人はそれはそれは実に本気の競争をしていたのだそうです。
「蜘蛛となめくじと狸」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
そしてまっくろになって、熱にうかされて、 「うう、こわいこわい。おれは地獄行きのマラソンをやったのだ。うう、切ない。」といいながらとうとう焦げて死んでしまいました。 なるほどそうしてみると三人とも地獄行きのマラソン競争をしていたのです。
「蜘蛛となめくじと狸」宮沢賢治(青空文庫)
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