黒蜥蜴(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物
女賊と名探偵の愛憎の対決
- 詳細なあらすじ
- 人物相関図
- ミステリ
- 文字数
- 107,664字
- 読了目安
- 約3時間35分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
江戸川乱歩が1934年(昭和9年)、雑誌「日の出」に連載した長編探偵小説。「黒蜥蜴」の異名をとる美しき女盗賊——昼は妖艶な貴婦人・緑川夫人、夜は暗黒街に君臨する女王が、大阪の宝石商の秘蔵する大宝石と、その令嬢を狙う。立ちはだかるのは名探偵・明智小五郎。変装と奇計、そして生きた人間を「人形」に加工して蒐集する黒蜥蜴の倒錯した美意識をめぐって、二人の頭脳戦は火花を散らす。悪の魅力を体現した女賊と名探偵の、愛憎入りまじる息づまる攻防を描いた乱歩の代表的長編で、のちに三島由紀夫が戯曲化したことでも名高い。
あらすじ
「黒蜥蜴」——二の腕に黒いトカゲの入墨をもつその女は、昼は美貌の貴婦人・緑川夫人として社交界にまぎれ、夜は暗黒街に君臨する女盗賊の女王である。彼女が狙うのは、大阪の宝石商・岩瀬庄兵衛が秘蔵する「エジプトの星」と呼ばれる大ダイヤ、そしてその令嬢・早苗の美しい肉体そのものだった。娘の身に危険を察した岩瀬は、名探偵・明智小五郎に護衛を依頼する。黒蜥蜴は巧妙な計略で早苗を誘拐し、明智もまた変装と機略で追いすがる。二人は互いの正体を知りながら、知恵と大胆さで丁々発止のかけひきをくり広げ、いつしか宿敵どうしの間には奇妙な敬愛にも似た感情が芽生えていく。黒蜥蜴の隠れ家は、生きた人間を剥製の「人形」に加工して並べた、美しくもおぞましい秘密の館だった。早苗をその蒐集品に加えようとする女賊の野望は、しかし明智の反撃の前にことごとく崩れ去る。最期、追いつめられた黒蜥蜴は毒をあおり、名探偵・明智小五郎の膝を枕に、満ち足りた微笑を浮かべて息絶える。あらわになった二の腕の黒トカゲの入墨だけが、主人との別れを悲しむように、かすかにうごめくのだった。悪の美学と名探偵の対決を描いた、乱歩ロマンの白眉である。
登場人物
- 黒蜥蜴(緑川夫人) 二の腕に黒トカゲの入墨をもつ女盗賊
- 明智小五郎 名探偵
- 岩瀬早苗 狙われる宝石商の令嬢
- 岩瀬庄兵衛 大阪の宝石商
人物相関図
章ごとの「詳細なあらすじ」
アプリでは、この作品を次の章立てで詳しく読めます(全文はアプリ内)。
- 一 この作品について
- 二 主要人物
- 三 主要なサブキャラクター
- 四 東京──暗黒街の女王と人形の首
- 五 大阪──怪老人と人間椅子
- 六 通天閣──「エジプトの星」の受け渡しと追跡
- 七 海上──怪談と水葬礼
- 八 地底──恐怖美術館と人形異変
- 九 結末──二人になった男とうごめく黒トカゲ
- 十 重要な設定と伏線
冒頭部(原文より)
この国でも一夜に数千羽の七面鳥がしめられるという、あるクリスマス・イヴの出来事だ。 帝都最大の殷賑地帯、ネオン・ライトの闇夜の虹が、幾万の通行者を五色にそめるG街、その表通りを一歩裏へ入ると、そこにこの都の暗黒街が横たわっている。
「黒蜥蜴」江戸川乱歩(青空文庫)
末尾部(原文より)
一世を震撼せしめた稀代の女賊「黒トカゲ」は、かくして息絶えたのであった。名探偵明智小五郎の膝を枕に、さも嬉しげな微笑を浮かべながら、この世を去ったのであった。 ふと見ると、さいぜん刑事の手を振りはらって逃げた時、黒衣の袖が破れたのであろう。美しい二の腕があらわになって、そこに、彼女のあだ名の由来をなした、あの黒トカゲの入墨が、これのみは今もなお生あるもののごとく、主人との別離を悲しむかのように、かすかに、かすかに、うごめいているかに感じられたのである。
「黒蜥蜴」江戸川乱歩(青空文庫)
名文
この国でも一夜に数千羽の七面鳥がしめられるという、あるクリスマス・イヴの出来事だ。
怪盗「黒トカゲ」と名探偵明智小五郎の対決を描く江戸川乱歩の長編の書き出し。華やかな夜の街から、物語が始まる。
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。