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黒百合(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

立山の黒百合と洪水の夜

  • 冒険
  • 恋愛

泉鏡花 1899年(明治32年)6月 「読売新聞」

文字数
78,113字
読了目安
約2時間36分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 富山県

この作品について

明治32年(1899年)6月から8月にかけて「読売新聞」に連載された長編。越中富山を舞台に、病で目を痛めた理学士の夫と、花売りを営む妻お雪の貧しい暮らし、子爵家の活発な少年滝太郎、知事の令嬢勇美子が絡み合う。立山の奥にだけ咲くという黒百合を求めて山に入るくだりは、大鷲や滝の幻想的な描写とともに読みどころ。洪水の夜まで、恋と義理の板挟みを描いた鏡花初期の代表的な長編のひとつ。

あらすじ

越中富山。知事の遠縁にあたる法学生が暮らす邸のある町に、子爵家の少年当主千破矢滝太郎と、知事の娘で博物学に詳しい勇美子がいる。町の裏通りでは、目を病んだ理学士の拓と、その妻で花売りのお雪が貧しく暮らしていた。拓の目を治すには、立山の石滝の奥にしか咲かない黒百合が要ると聞いたお雪は、命がけで山に入ろうとする。気は荒いが情に厚い滝太郎は、山中でお雪とともに大鷲に襲われながら、彼女を守って黒百合の花を取らせる。しかしお雪が夫のある身だと告げると、少年は怒りを抑えて身を引く。山から戻った大雨の夜、洪水が町を襲い、滝太郎は拓とお雪を助けようとするが、お雪は夫を残して逃げるのを拒み、水に沈んで命を落とす。翌朝、勇美子が濁流に流れてきた黒百合の花を拾う。数年後、滝太郎が拓らとともに冒険船に乗るとき、その船はこの黒百合の名で呼ばれるだろうと結ばれる。

登場人物

冒頭部(原文より)

 越中の国立山なる、石滝の奥深く、黒百合となんいうものありと、語るもおどろおどろしや。姫百合、白百合こそなつかしけれ、鬼と呼ぶさえ、分けてこの凄じきを、雄々しきは打笑い、さらぬは袖几帳したまうらむ。富山の町の花売は、山賤の類にあらず、あわれに美しき女なり。

「黒百合」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

形は貝母に似て、暗緑帯紫の色、一つは咲いて花弁が六つ、黄粉を包んだ蘂が六つ、莟が一つ。  数年の後、いずこにも籍を置かぬ一艘の冒険船が、滝太郎を乗せて、拓お兼等が乗組んで、大洋の波に浮んだ時は、必ずこの黒百合をもって船に号けるのであろう。

「黒百合」泉鏡花(青空文庫)

名文

越中の国立山なる、石滝の奥深く、黒百合となんいうものありと、語るもおどろおどろしや。

序の書き出し。立山の奥に咲くという黒百合の伝えを、古風な語り口で妖しく紹介する。

富山の町の花売は、山賤の類にあらず、あわれに美しき女なり。その名の雪の白きに愛でて、百合の名の黒きをも、濃い紫と見たまえかし。

序の結び。花売の娘「雪」の名の白さと黒百合の黒さを対にして、読者に物語の見方を委ねる、鏡花らしい美文。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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