草迷宮(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
母の手毬唄を求めるさすらい
- 幻想
- 怪奇
- 文字数
- 71,705字
- 読了目安
- 約2時間23分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 神奈川県
この作品について
泉鏡花の幻想文学を代表する中編。1908年(明治41年)、春陽堂から刊行された。亡き母が幼い日に歌ってくれた一つの手毬唄——その続きを求めて諸国をさすらう青年・葉越明が、三浦半島の魔所と噂される秋谷の廃屋敷に迷い込み、妖美な怪異と幻に翻弄されるさまを、鏡花独特の絢爛たる文体で描く。母恋いのテーマと怪奇幻想を溶け合わせ、現実と夢幻の境が崩れていく迷宮的な物語世界は、鏡花の美学の極致とされる。
あらすじ
相模の海辺、三浦の大崩壊にほど近い葉山・秋谷のあたりは、古くから「魔所」と噂される土地であった。そこにある屋敷は、住む者が次々と怪異に見舞われる化物屋敷として恐れられ、今は空き家となっている。この屋敷に、旅の青年・葉越明が宿を求めてやって来る。彼は、幼くして亡くした母がかつて歌ってくれた手毬唄の、思い出せぬ続きの文句を探して、諸国をあてどなくさまよい歩いているのだった。屋敷を守る老僕や、通りかかった修行者たちの語る怪談を聞くうち、明の前には次々と妖しい幻が立ち現れる。美しい女、宙を舞う手毬、夜ごとの物の怪——現実と夢幻の境は溶け合い、屋敷そのものが一つの迷宮と化して、明を母の記憶の奥へと誘い込んでいく。求め続けた手毬唄の調べと、恋い慕う亡き母のおもかげが妖美な怪異のなかに重なり合い、青年はついに、この世ならぬ幻の世界へと分け入っていくのだった。
登場人物
- 葉越明 亡き母が歌ってくれた手毬唄の続きを求めて諸国をさすらう青年。秋谷の魔所と噂される屋敷に迷い込む本作の主人公
冒頭部(原文より)
三浦の大崩壊を、魔所だと云う。葉山一帯の海岸を屏風で劃った、桜山の裾が、見も馴れぬ獣のごとく、洋へ躍込んだ、一方は長者園の浜で、逗子から森戸、葉山をかけて、夏向き海水浴の時分、人死のあるのは、この辺ではここが多い。
「草迷宮」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
最切めて懐しく聞ゆ、とすれば、樹立の茂に哄と風、木の葉、緑の瀬を早み……横雲が、あの、横雲が。
「草迷宮」泉鏡花(青空文庫)
原文を読む
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