迷子(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
雨上がりの交番の迷子
- 心理
- 文字数
- 2,348字
- 読了目安
- 約5分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
泉鏡花の掌編。末尾に「明治三十年八月」とある。雨上がりの町の交番の前で、人だかりの中心にいる迷子を見かけた女お孝が、思わず抱き上げて親を探そうとする。目を患った幼い子の哀れさと、野次馬や巡査のやりとりが、短い場面に凝縮されている。
あらすじ
お孝が買物に出かける道で、交番の前に人だかりができている。六つばかりの迷子が泣いており、巡査が尋ねても家の場所が分からない。目を煩ったその子は、ぼろを着て、寒さに震えている。野次馬の子らは面白がって囃し立て、飼い犬が迷子をなめて見物人を笑わせる。見ていられなくなったお孝は、思わず「私が、あの、さがしますから」と言って子を抱きあげるが、下駄の緒が緩んでいたので、人前でばったり転んでしまう。皆が哄笑するなか、お孝は泣き出す。
登場人物
- お孝 買物の途中で迷子に出会った女
- 迷子 六つばかりの、目を患った男の子
- 巡査 交番で迷子を預かる
冒頭部(原文より)
お孝が買物に出掛ける道だ。中里町から寺町へ行かうとする突當の交番に人だかりがして居るので通過ぎてから小戻をして、立停つて、少し離れた處で振返つて見た。 ちやうど今雨が晴れたんだけれど、蛇の目の傘を半開にして、うつくしい顏をかくして立つて居る。足駄の緒が少し弛んで居るので、足許を氣にして、踏揃へて、袖の下へ風呂敷を入れて、胸をおさへて、顏だけ振向けて見て居るので。大方女の身でそんなもの見るのが氣恥かしいのであらう。
「迷子」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
ぐるツと取卷かれて恥しいので、アタフタし、駈け出したい位急足で踏出すと、おもいもの抱いた上に、落着かないからなりふりを失つた。 穿物の緒が弛んで居たので踏返してばつたり横に轉ぶと姿が亂れる。 皆で哄と笑つた。お孝は泣き出した。
「迷子」泉鏡花(青空文庫)
原文を読む
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