アプリで読む

無料・登録不要

身上話(森鴎外)のあらすじ・登場人物

宿の女中が語る身の上

  • 恋愛
  • 心理

森鴎外 1910年(明治43年)11月 「新潮」

文字数
7,462字
読了目安
約15分
表記
旧字旧仮名
種別
小説

この作品について

1910年(明治43年)11月の「新潮」に発表された短編。海辺の大原の宿に滞在する圭一のもとへ、ある夜、宿の女中の花がやってくる。花は恋人に宛てた手紙の代筆をまた頼むが、圭一は「馴れ初めを話してくれれば書く」と条件を出し、花は自分の身の上を語り出す。ほとんどが二人の会話で進み、波の音や階下のざわめきが場の背景になる。

あらすじ

暑い盛りから海辺の大原の宿に泊まっている圭一のもとへ、夜、女中の花が訪ねてくる。花は以前、圭一に辻村辰五郎という男への手紙を一度だけ代筆してもらっており、また書いてほしいという。圭一は、二人の仲がどう深まったかを話してくれれば書いてやると条件を出し、花は語り始める。辻村は東京から来る男で、金が欲しくて深い仲になったが、喧嘩の末に高価な時計を投げつけて壊したこともあった。ある日、急にアメリカへ行くという手紙と百円の手形が届き、花は横浜へ駆けつけたが、船はもう出た後で、雪の降る桟橋に立ちつくした。その後、母とも相談して再び宿で働くことにしたが、辻村は先月帰国したのに、何を言ってやっても会いに来ない。階下から呼ばれた花は話を切り上げて部屋を出ていき、圭一はしばらくその後ろ姿を見送って考える。

登場人物

冒頭部(原文より)

「御勉強。」  障子の外から、小聲で云ふのである。 「誰だ。音をさせないで梯を登つて、廊下を歩いて來るなんて、怪しい奴だな。」 「わたくし。」  障子が二三寸開いて、貧血な顏の切目の長い目が覗く。微笑んでゐる口の薄赤い唇の奧から、眞つ白い細く揃つた齒がかがやく。 「なんだ。誰かと思つたら、花か。もう手紙の代筆は眞平だ。」

「身上話」森鴎外(青空文庫)

末尾部(原文より)

 翡翠の釵を拔いて、顏を蹙めて頭を掻いてゐる。  下の座舖で拳を打つ聲がする。三味線の音に騷がしい笑聲が交つて聞える。 「お花さん」と大聲に、梯の中程まで登つて呼ぶ女の聲がする。  花は圭一の目を搜すやうにちよいと見た。そして「いやになつちまひますわ」と云つて、ついと起つて部屋を出た。  圭一は暫く跡を見送つて、何か考へてゐた。

「身上話」森鴎外(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品