蜜のあわれ(室生犀星)のあらすじ・登場人物
老作家と金魚の少女の対話
- 幻想
- 文字数
- 76,833字
- 読了目安
- 約2時間34分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
室生犀星が1959年(昭和34年)、「新潮」に発表した中編小説。晩年の犀星が、一尾の金魚に着想を得て、いっさいを会話体で書き通した幻想と官能にみちた異色作である。老作家「おじさま」と、その飼う赤い金魚が少女の姿を借りた「赤子(あかこ)」との、たわむれるような対話だけで綴られる。老いと若さ、生と死、現実と幻とが、蜜のように甘く溶け合うなかで、なまめかしくも愛らしい金魚の少女の生が、はかなくうたわれる。犀星文学の到達点のひとつとされる名品。
あらすじ
「おじさま、お早うございます」――そう呼びかける「あたい」は、赤子(あかこ)という名の、なまめかしくも愛らしい少女。だがその正体は、老作家「おじさま」が飼っている一尾の赤い金魚が、人の姿を借りたものなのだった。この物語は、そのほとんどすべてが、老作家と金魚の少女・赤子との、たわむれるような対話だけで綴られていく。若い娘のようにおませで、蠱惑的で、そして無邪気な赤子は、老いた「おじさま」にまとわりつき、甘え、からかい、そして生と死をめぐる言葉をかわす。二人のまわりには、夕方五時になると現れる、亡くなった女――田村のおばさまの霊や、さまざまな人の影もよぎっていく。老いと若さ、生と死、現実と幻とが、蜜のように甘く溶け合う対話のなかで、金魚の少女の生と死がはかなくうたわれる。焼跡の闇に消えていく者へ、赤子は「春になっても、あたいは死なないでいるから」と呼びかける。老作家・犀星が晩年、一尾の金魚に着想を得て、いっさいを会話体で書き通した、幻想と官能にみちた異色の名品である。
登場人物
- 赤子(あかこ) なまめかしくも愛らしい少女。その正体は、老作家が飼う一尾の赤い金魚が人の姿を借りたもの
- おじさま 赤子を飼う老作家。金魚の少女とたわむれるような対話をかわす
- 田村のおばさま 夕方五時になると現れる、亡くなった女の霊
冒頭部(原文より)
一、あたいは殺されない 「おじさま、お早うございます。」 「あ、お早う、好いご機嫌らしいね。」
「蜜のあわれ」室生犀星(青空文庫)
末尾部(原文より)
「おばさま、田村のおばさま。暖かくなったら、また、きっと、いらっしゃい。春になっても、あたいは死なないでいるから、五時になったら現われていらっしゃい、きっと、いらっしゃい。」
「蜜のあわれ」室生犀星(青空文庫)
原文を読む
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