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蜜のあわれ(室生犀星)のあらすじ・登場人物

老作家と金魚の少女の対話

  • 幻想

室生犀星 1959年(昭和34年)1月 「新潮」

文字数
76,833字
読了目安
約2時間34分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

室生犀星が1959年(昭和34年)、「新潮」に発表した中編小説。晩年の犀星が、一尾の金魚に着想を得て、いっさいを会話体で書き通した幻想と官能にみちた異色作である。老作家「おじさま」と、その飼う赤い金魚が少女の姿を借りた「赤子(あかこ)」との、たわむれるような対話だけで綴られる。老いと若さ、生と死、現実と幻とが、蜜のように甘く溶け合うなかで、なまめかしくも愛らしい金魚の少女の生が、はかなくうたわれる。犀星文学の到達点のひとつとされる名品。

あらすじ

「おじさま、お早うございます」――そう呼びかける「あたい」は、赤子(あかこ)という名の、なまめかしくも愛らしい少女。だがその正体は、老作家「おじさま」が飼っている一尾の赤い金魚が、人の姿を借りたものなのだった。この物語は、そのほとんどすべてが、老作家と金魚の少女・赤子との、たわむれるような対話だけで綴られていく。若い娘のようにおませで、蠱惑的で、そして無邪気な赤子は、老いた「おじさま」にまとわりつき、甘え、からかい、そして生と死をめぐる言葉をかわす。二人のまわりには、夕方五時になると現れる、亡くなった女――田村のおばさまの霊や、さまざまな人の影もよぎっていく。老いと若さ、生と死、現実と幻とが、蜜のように甘く溶け合う対話のなかで、金魚の少女の生と死がはかなくうたわれる。焼跡の闇に消えていく者へ、赤子は「春になっても、あたいは死なないでいるから」と呼びかける。老作家・犀星が晩年、一尾の金魚に着想を得て、いっさいを会話体で書き通した、幻想と官能にみちた異色の名品である。

登場人物

冒頭部(原文より)

一、あたいは殺されない 「おじさま、お早うございます。」 「あ、お早う、好いご機嫌らしいね。」

「蜜のあわれ」室生犀星(青空文庫)

末尾部(原文より)

「おばさま、田村のおばさま。暖かくなったら、また、きっと、いらっしゃい。春になっても、あたいは死なないでいるから、五時になったら現われていらっしゃい、きっと、いらっしゃい。」

「蜜のあわれ」室生犀星(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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