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夢遊病者の死(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物

夢遊病者をめぐる皮肉な錯誤

  • ミステリ

江戸川乱歩 1925年(大正14年)7月 「苦楽」

文字数
11,121字
読了目安
約22分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

江戸川乱歩が1925年(大正14年)、「苦楽」に発表した短編。幼いころからの夢遊病(寝ぼける癖)に苦しみ、無意識のうちに盗みまで働いてしまう男・彦太郎。ある殺人事件をめぐって、彼の周囲に奇妙な足跡の謎が生じる。皮肉な錯誤と、夢遊病者の哀れな運命を描いた、乱歩初期のミステリである。

あらすじ

彦太郎は、勤め先の木綿問屋をしくじって、老いた父親の厄介になっていた。幼いころから彼には、寝ぼける癖——夢遊病があった。はっきりした寝言を言い、夜半にむくむくと起き上がって歩き回る。ひどいときには、眠ったまま戸締りを開けて町内を一巡りしたり、無意識のうちに他人の品物を持ち帰ったりする。この「知らず知らずの泥坊」のために、彼はあと三年で暖簾を分けてもらえるはずの奉公先を、とうとう追い出されてしまったのだ。父親が小使いを勤めるM伯爵邸で、やがて殺人事件が起こる。現場に残された足跡が犯人のものと見て、人々は騒ぎ立てるが、真相はまったく皮肉なものだった——その足跡は、ひび割れた桐の下駄を履き換えた被害者自身のものだったのだ。殺人があれば犯人の足跡があるはず、という思い込みが、人々を迷わせていた。事件のさなか、なぜか逃亡を図った夢遊病者・彦太郎は、父とともに変死をとげる。世間の同情を集めながらも、彼がなぜ逃げようとしたのかは、永久に解けぬ謎として残された。夢遊病者の哀れな運命と、皮肉な錯誤を描いた、乱歩初期のミステリである。

登場人物

冒頭部(原文より)

 彦太郎が勤め先の木綿問屋をしくじって、父親の所へ帰って来てからもう三ヶ月にもなった。旧藩主M伯爵邸の小使みたいなことを勤めてかつかつ其日を送っている、五十を越した父親の厄介になっているのは、彼にしても決して快いことではなかった。

「夢遊病者の死」江戸川乱歩(青空文庫)

末尾部(原文より)

 その翌々日、M伯爵家の門を二つの棺が出た。いうまでもなく、不幸なる夢遊病者彦太郎とその父親を納めたものである。噂を聞いた世間の人達は、だれもかれも、彼等親子の変死を気の毒がらぬものはなかった。だが、あの時彦太郎がなぜ逃亡を試みたかと云う点だけは、永久に解くことの出来ない謎として残されていた。

「夢遊病者の死」江戸川乱歩(青空文庫)

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