妙齢(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
鶴に隠された姫と少年
- 幻想
- 文字数
- 1,748字
- 読了目安
- 約3分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
明治41年(1908)5月の日付をもつ泉鏡花の掌編。雨の日のつれづれに、仏が弟子たちに語って聞かせる寓話の形をとる。三歳にして国君に見初められた美しい娘と、彼女を山奥の大木に隠す鶴、そこへ現れる美少年の運命を、芝居がかった語り口で描く。
あらすじ
雨の日のつれづれに、仏が昔の話を語る。ある国に、弱竹のように美しい婦人がいて、玉のような女の子を産んだ。三歳になったとき、国君がその美しさを聞いて召し寄せたが、その色香に傾国の恐れを覚え、名高い道人を召して占わせる。道人は、この娘は妙齢になれば才徳をかね備えた良妻賢母となるが、殿の夫人となる前に、別の夫を持つ運命だと告げた。殿は怒り、鶴を呼んで、娘をだれにも見せないよう山奥に隠せと命じる。鶴は娘を大薩摩ヶ嶽の高い木の上に運び、綾錦の巣の中で育てる。年月がたち、ある日、華厳の滝から落ちた美少年が、巌に引っかかって助かり、木によじ登って娘と契りを結ぶ。月日がたち、娘の乳が色づくのに気づいた鶴は怒って少年を嘴で撥ね飛ばし、少年は天に舞い上がって姿を消した。仏は「外面は女菩薩、内心は夜叉」と結び、周梨槃特ら弟子たちが続きをせがむと、苦笑して「我は知らず」と答えた。
冒頭部(原文より)
雨の日のつれ/″\に、佛、教へてのたまはく、昔某の國に一婦ありて女を生めり。此の婦恰も弱竹の如くにして、生れし女玉の如し。年はじめて三歳、國君其の色を聞し召し、仍ち御殿にお迎へ遊ばし、掌に据ゑられしが、忽ち恍惚となり給ふ。然るにても其の餘りの美しさに、ひととなりて後國を傾くる憂もやとて、當時國中に聞えたる、道人何某を召出して、近う、近う、爾よく此の可愛きものを想せよ、と仰せらる。名道人畏り、白き長き鬚を撫で、あどなき顏を仰向けに、天眼鏡をかざせし状、花の莟に月さして、雪の散るにも似たりけり。
「妙齢」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
心得たか、と語らせ給へば、羅漢の末席に侍ひて、悟顏の周梨槃特、好もしげなる目色にて、わが佛、わが佛殿と道人の問答より、木の葉を衾の男女の睦言、もそつとお説きなされと言ふ。佛、苦笑したまひて、我は知らずとのたまひぬ。
「妙齢」泉鏡花(青空文庫)
原文を読む
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