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長屋天一坊(山本周五郎)のあらすじ・登場人物

長屋で起きた偽御落胤

  • 風刺

山本周五郎 1950年(昭和25年)5月 「講談雑誌」

文字数
29,471字
読了目安
約59分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

徳川吉宗の世を騒がせた天一坊事件——その大がかりな騙りを、江戸の裏長屋で小さくやり直したらどうなるか。講釈師が高座で語るという体裁をとり、「第一席」「第二席」と席をあらためながら進む、山本周五郎の異色の喜劇。人が肩書と噂にどれほど弱いかを笑いのめす。

あらすじ

徳川八代将軍吉宗の時代に、天一坊事件という騒動があった。真相のところは諸説まちまちで、四五行で終る記事もあれば、本書一冊分ほどの膨大な実録もある——講釈師はそう前置きしてから、本題の「長屋天一坊」へ入ってゆく。舞台は江戸の裏長屋。差配の吾助が、書画にも刀剣にも通じているつもりの半可通で、長屋の住人たちを「人間の皮をかぶった薪ざっぽだ」と罵るような男である。そこへ、御落胤めいた素姓をほのめかす者が現れる。……噂は噂を呼び、長屋じゅうがその気になってゆく。吾助は御殿新築のために用材を買い込み、方々から金を借り、周囲は「うんなにしろ本筋の本格だからな」とはしゃぐ。銀太と金太は吉報を伝えるべく長屋じゅうを歴訪する。しかし騒ぎが大きくなればなるほど、化けの皮の剥がれる日は近い。演者は結末をこう告げる——騒ぎを聞いて銀太と金太は逸早く行方をくらまし、繩屋一家では、おわきは率直に言えば六人めの婿に逃げられ、吾助は用材の代金と伊賀守邸へ返す七十両のために長屋もろとも自分の店と居宅を売却し、ある夜、闇に紛れて親子三人いずれかへ逃亡した。特にこれ以上、演者としてはなにも付け加えたくないと思う。さらば。

登場人物

冒頭部(原文より)

第一席 天一坊は大逆犯人のこと 並びに諸説巷間を賑わすこと  徳川八代将軍吉宗の時代に、天一坊事件という騒動があった。  真相のところは諸説まちまちで、ここに紹介すれば四五行で終る記事もあり、本書一冊分くらいのぼうだいな実録もある。

「長屋天一坊」山本周五郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

 長屋天一坊なる一大事件の終結は以上の如くであって、特にこれ以上、演者としてはなにも付加えたくないと思う。さらば。

「長屋天一坊」山本周五郎(青空文庫)

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