何者(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物
目の前にいる犯人を隠す本格
- ミステリ
- 文字数
- 38,452字
- 読了目安
- 約1時間17分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
江戸川乱歩が1929年(昭和4年)、「時事新報」夕刊に連載した本格探偵小説。犯人は最初から読者の目の前にいながら、最後までそれと分からない——乱歩がその「本格」の条件をみずから課して書いた一編である。ある家に出入りする人物たちのなかにまぎれた真犯人を、意外な探偵が突きとめる。知的なパズルとして楽しめる、乱歩の本格ものである。
あらすじ
「犯人は最初から読者の目の前にいながら最後までどれが犯人だか分らない」——乱歩みずから、本格探偵小説の条件にできるだけ適わせることを心がけて書いた、と述べる一編である。物語は、語り手「私」が「ある人」から聞かされた、四五年前の事件として語られる。ある家庭で起きた奇妙な盗難にはじまり、やがて事件は思わぬ広がりを見せていく。その家に出入りする人物たちが、それぞれに疑わしく描かれるなかで、誰が「何者」なのか——真犯人の正体が、最後まで巧みに隠される。事件を解き明かすのは、「私」が日ごろ「理窟っぽいばかり」と軽んじていた、赤井と名乗る人物だった。砂丘のかげで真相を突きつけられた「私」に、赤井は静かに正体を明かす。「僕はね、君が日頃軽蔑していたあの明智小五郎なのです」——ある秘密の盗難事件を調べるため、変名で家に出入りしていたのだ、と。知識的な遊戯として、謎解きの妙を味わえる、乱歩の本格探偵小説である。
登場人物
- 私 事件の渦中にいる語り手
- 赤井(明智小五郎) 変名で家に出入りしていた名探偵
冒頭部(原文より)
「この話はあなたが小説にお書きなさるのが当然です。是非書いて下さい」 ある人が私にその話をしたあとで、こんなことを云った。四五年以前の出来事だけれど、事件の主人公が現存していたので憚って話さなんだ。その人が最近病死したのだ。ということであった。 私はそれを聞いて、成程当然私が書く材料だと思った。
「何者」江戸川乱歩(青空文庫)
末尾部(原文より)
「ただお別れする前に、僕の本名を申上げて置きましょう。僕はね、君が日頃軽蔑していたあの明智小五郎なのです。お父さんの御依頼を受けて陸軍のある秘密な盗難事件を調べる為めに、変名でお宅へ出入りしていたのです。あなたは明智小五郎は理窟っぽいばかりだとおっしゃった。だが、その私でも、小説家の空想よりは実際的だということがお分りになりましたか。……では左様なら」 そして、驚愕と当惑の為に上の空の私の耳へ、赤井さんが砂を踏んで遠ざかる静かな足音が聞こえて来た。
「何者」江戸川乱歩(青空文庫)
原文を読む
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