にぎり飯(永井荷風)のあらすじ・登場人物
大空襲の火の中のにぎり飯
- 心理
- 文字数
- 7,222字
- 読了目安
- 約14分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
永井荷風が戦後に書いた短編。1945年(昭和20年)3月の東京大空襲のさなか、深川の警防団員だった荒物屋の佐藤が、火の中で妻子とはぐれる——空襲下の混乱と、市井の人々の情を、荷風が静かな筆致で描いた一編である。
あらすじ
深川古石場町の警防団員だった荒物屋の佐藤は、1945年(昭和20年)3月9日夜半の東京大空襲に、やっとの思いで火の中を葛西橋近くまで逃げ延びた。だが、逃げ迷ううちに、子供をおぶった女房の姿を見失ってしまう。声をかぎりに呼びつづけたが、もうどこではぐれたのかもわからない。放水路の堤防にたどりつき、生命拾いをしたことを確かめた佐藤は、避難者の群れのなかに、はぐれた妻子の姿を探し求める。空襲下の混乱、焼け出された人々の右往左往、そして見知らぬ者どうしのささやかな情——荷風は、この惨状のなかに生きる市井の人々の姿を、突き放したような、それでいて温かな筆致で描いていく。妻子との再会をめぐる物語は、やがて思わぬ結末へと至る。戦争の惨禍を、声高でなく淡々と写しとった、荷風晩年の一編である。
冒頭部(原文より)
深川古石場町の警防団員であった荒物屋の佐藤は三月九日夜半の空襲に、やっとのこと火の中を葛西橋近くまで逃げ延び、頭巾の間から真赤になった眼をしばだたきながらも、放水路堤防の草の色と水の流を見て、初て生命拾いをしたことを確めた。
「にぎり飯」永井荷風(青空文庫)
末尾部(原文より)
「突留めるところまで、やって見なけれア分らないと思ったからよ。みんなお前の為だ。お茶代一ぱい、七十円取られた。」 千代子は焼餅もやかず、あくる日は早速法華経寺へお礼参に出かけた。
「にぎり飯」永井荷風(青空文庫)
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