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二十六夜(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物

梟の林の三晩の説法

  • 幻想
  • 心理

宮沢賢治 

文字数
16,793字
読了目安
約34分
表記
新字新仮名
舞台
  • 岩手県

この作品について

北上川に面した獅子鼻の松林に梟たちが集まり、梟の坊さんの説法を旧暦六月二十四日から三晩聴く物語。題の二十六夜は、月の出を拝む二十六夜待ちの行事に由来する。漢文調の経文のような「梟鵄守護章」と、平易な講釈、親梟や子梟たちの会話を行き来しながら、他の命を奪って生きる者の苦しみと救いを、仏教の語彙で語る。説法の言葉の重さと、子どもの梟の無邪気さとの落差が印象に残る。

あらすじ

旧暦六月二十四日の晩、北上川のほとりの獅子鼻の松林に梟たちが集まり、年老いた梟の坊さんの説法に耳を傾ける。説かれるのは、疾翔大力が悪禽に離苦解脱の道を述べたという「梟鵄守護章」で、坊さんはまず疾翔大力がもとは一羽の雀で、飢饉のなか、恩のある親子のために身を捨てた菩薩であると講じる。つぎに小禽を襲って生きる梟の悪業が説かれる。説法のあいまには、三羽の子梟が集中できずにふざけ合って叱られるが、末の穂吉だけはおとなしく聴いている。二十五日の晩、林は重く沈んでいる。穂吉が草刈りの子どもに捕まり、人の家に囚われているのだった。親や仲間は涙にくれ、仕返しを口にする者も出るが、坊さんは「血で血を洗う」ことになると諫め、穂吉に伝えさせる言葉を託して、説法を続ける。二十六日の晩、穂吉は脚を折られたまま親元に返され、傷みに耐えながら説法を聴く。恨みを返したいと言う若い梟たちを坊さんがなだめるうち、二十六夜の月が昇り、その船のような月から紫の雲が湧いて、疾翔大力の姿が現れる。梟たちが「南無疾翔大力」と叫ぶ中、穂吉は微笑んだまま息を引き取っていた。

登場人物

冒頭部(原文より)

旧暦の六月二十四日の晩でした。  北上川の水は黒の寒天よりももっとなめらかにすべり獅子鼻は微かな星のあかりの底にまっくろに突き出ていました。  獅子鼻の上の松林は、もちろんもちろん、まっ黒でしたがそれでも林の中に入って行きますと、その脚の長い松の木の高い梢が、一本一本空の天の川や、星座にすかし出されて見えていました。  松かさだか鳥だかわからない黒いものがたくさんその梢にとまっているようでした。  そして林の底の萱の葉は夏の夜の雫をもうポトポト落して居りました。  その松林のずうっとずうっと高い処で誰かゴホゴホ唱えています。

「二十六夜」宮沢賢治(青空文庫)

末尾部(原文より)

「南無疾翔大力、南無疾翔大力。」  みんなは高く叫びました。その声は林をとどろかしました。雲がいよいよ近くなり、捨身菩薩のおからだは、十丈ばかりに見えそのかがやく左手がこっちへ招くように伸びたと思うと、俄に何とも云えないいいかおりがそこらいちめんにして、もうその紫の雲も疾翔大力の姿も見えませんでした。ただその澄み切った桔梗いろの空にさっきの黄金いろの二十六夜のお月さまが、しずかにかかっているばかりでした。 「おや、穂吉さん、息つかなくなったよ。」俄に穂吉の兄弟が高く叫びました。  ほんとうに穂吉はもう冷たくなって少し口をあき、かすかにわらったまま、息がなくなっていました。そして汽車の音がまた聞えて来ました。

「二十六夜」宮沢賢治(青空文庫)

名文

北上川の水は黒の寒天よりももっとなめらかにすべり獅子鼻は微かな星のあかりの底にまっくろに突き出ていました。

冒頭近くの夜景。旧暦六月二十四日の晩、梟たちの説法が始まる前の北上川を、「黒の寒天」という比喩でとらえる。

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