二世の契(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
枯野に潜む主ある恋
- 幻想
- 恋愛
- 文字数
- 17,550字
- 読了目安
- 約35分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 静岡県
この作品について
1903年(明治36年)1月の『新小説』に発表された幻想小説。猟銃を手に枯野へ踏み入った青年・桂木が、荒野の一軒家の老婆と語らううちに、美しい女の下着を介して、妖魔の裁きの場に立ち会う。「主のあるものですが、一所に死んで下さいませんか」という言葉が、物語の核をなす。『日本幻想文学集成1 泉鏡花』に収められる。
あらすじ
三島の連山を望む広野で、桂木は雨の中、停車場跡の近くの一軒家に駆け込む。糸車を回す老婆に、荒野には恐ろしいものが出ると噂に聞いたと迫るが、はぐらかされる。桂木は、縁者の旅商人が館で「主のあるものですが、一所に死んで下さいませんか」と美女に誘われた話を語る。老婆は笑い、壁の蓑の下にかかっていた美しい女の下着を、掻巻に使わせる。着物を抱いて横になった桂木のそばに、女の面影が現れ、同じ言葉をささやく。突然、家が揺れて壁が崩れ、霧とともに武者のような巨人たちが踏み込んでくる。巨人たちは着物の主を樹に縛り、男の居場所を吐かせようと笞で打つ。桂木は耐えかねて飛び出すが、掟により、死を惜しむ者は殺されないと言われる。桂木は命を許されるが、女は斬られる運命にあった。桂木は霧の野を抜け、台場の茶屋にたどり着く。
登場人物
- 桂木 東京の学校の秀才。亡き恋人の姉から猟銃を贈られた青年
- 老婆 荒野の一軒家で糸車を回す
- 着物の主の女 「主あるもの」として妖魔に咎められる
- 巨人たち 霧の衣をまとい、野を支配する異形の群れ
冒頭部(原文より)
真中に一棟、小さき屋根の、恰も朝凪の海に難破船の俤のやう、且つ破れ且つ傾いて見ゆるのは、此の広野を、久しい以前汽車が横切つた、其の時分の停車場の名残である。
「二世の契」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
山家の茶屋の店さきへ倒れたが、火の赫と起つた、囲炉裡に鉄網をかけて、亭主、女房、小児まじりに、餅を焼いて居る、此の匂をかぐと、何ういふものか桂木は人間界へ蘇生つたやうな心持がしたのである。 汽車がついたと見えて、此処まで聞ゆるは、のんきな声、お弁当は宜し、お鮨はいかゞ。
「二世の契」泉鏡花(青空文庫)
原文を読む
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