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お勢登場(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物

妖婦お勢の冷酷な悪意

  • 怪奇

江戸川乱歩 1926年(昭和元年)7月 「大衆文芸」

文字数
11,790字
読了目安
約24分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

江戸川乱歩が1926年(大正15年)、「大衆文芸」に発表した短編。肺を病んで家に閉じこもる夫・格太郎と、若い情夫のもとへ通う不義の妻・お勢。ある日、子どもたちとのかくれんぼの最中に、格太郎が古い長持の中へ隠れて閉じこめられてしまう。夫の危機を悟りながら、お勢がとった恐るべき行動とは——。妖婦お勢の冷酷な悪意を鮮烈に描き、乱歩短編の代表作の一つに数えられる一編である。

あらすじ

肺を病んだ格太郎は、若い情夫のもとへ通う妻・お勢の不義を知りながら、先の短い自分の身と、幼い子ども、そして未練とから、それを責めることもできずにいた。お勢はそんな夫の弱みを知り抜き、情夫との情事の合間に、ほんの少しばかりの情けを夫にかけて、危うい均衡を保っていた。ある日、格太郎は子どもたちとかくれんぼをして遊ぶうち、蔵にあった古い長持の中へ身を隠す。ところが、重い蓋がはずみで閉じてしまい、内側からは開けられなくなってしまった。息苦しさにもがき、必死に助けを呼ぶ格太郎——その物音に気づいたお勢は、しかし、蓋を開けようとはしなかった。夫がこのまま死ねば、邪魔者が消える。彼女は冷酷にも夫を見殺しにするのだ。夫の葬式を済ませたお勢は、みごとな演技で疑いをかわし、遺産を手にして子とともに姿を消していく。問題の長持だけが、古道具屋へと売り払われ、掻き傷と不気味な仮名文字を刻んだまま、どこかへ流れていった。妖婦お勢の底知れぬ悪意を描き切った、乱歩短編の傑作である。

登場人物

冒頭部(原文より)

 肺病やみの格太郎は、今日も又細君においてけぼりを食って、ぼんやりと留守を守っていなければならなかった。最初の程は、如何なお人好しの彼も、激憤を感じ、それを種に離別を目論んだことさえあったのだけれど、病という弱味が段々彼をあきらめっぽくして了った。先の短い自分の事、可愛い子供のことなど考えると、乱暴な真似はできなかった。

「お勢登場」江戸川乱歩(青空文庫)

末尾部(原文より)

 問題の長持は、おせいが強いて貰い受けて、彼女から密に古道具屋に売払われた。その長持は今何人の手に納められたことであろう。あの掻き瑕と不気味な仮名文字とが、新しい持主の好奇心を刺戟する様なことはなかったであろうか。そして又、「オセイ」という不可思議なる三字に、彼は果して如何なる女性を想像したであろう。

「お勢登場」江戸川乱歩(青空文庫)

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