ペンとインキつぼ(アンデルセン)のあらすじ・登場人物
ペンとインキつぼの口げんか
- 風刺
- 翻訳
- 文字数
- 2,963字
- 読了目安
- 約6分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
アンデルセンが1859年に発表した童話(原題「Pen og Blækhuus」)を、矢崎源九郎が訳したもの(新潮文庫『人魚の姫 アンデルセン童話集Ⅰ』)。詩人の机の上で、インキつぼとペンが、詩を生むのはどちらかと言い争うところから始まる。バイオリンの名人の演奏に心をうたれた詩人の思いが、創作の力はどこから来るのかという問いへつながっていく。小さな文房具のけんかを通して、芸術家のおごりを戒めた、短い寓話。
あらすじ
詩人の机の上で、インキつぼは、自分の中からあらゆる詩が生まれるのがふしぎだと言い、鵞ペンは、書くのは自分だと反論して、おたがいを見くだしあう。その晩、詩人は音楽会で名人のバイオリンの演奏を聞いて、心をうたれて帰ってくる。弓とバイオリンが自分のことをじまんするのはばかげているが、人間も詩人や学者や将軍も、神の奏でる楽器にすぎない、と書きとめ、「名人と楽器」と題をつける。ペンはこれを自分が書いたと得意になり、インキつぼはそれは自分が与えた材料で、うぬぼれをこらしめる一うちだと言い返し、二人は口げんかをして眠る。詩人はひとり、神の光を感じながら、永遠の名人にのみ栄光あれ、と思う。
登場人物
- インキつぼ 自分の中からあらゆる詩が生まれると思う
- 鵞ペン 書くのは自分だと主張する
- 詩人 音楽会の帰りに「名人と楽器」を書く
冒頭部(原文より)
ある、詩人の部屋の中でのお話です。だれかが、詩人の机の上にあるインキつぼを見て、こう言いました。 「こんなインキつぼの中から、ありとあらゆるものが生れてくるんだから、まったくもってふしぎだなあ! 今度は、いったい、なにが出てくるんだろう? いや、ほんとにふしぎなもんさ」 「そうなのよ」と、インキつぼは言いました。「それが、あたしには、どうしてもわからないの。いつも言ってることなんですけどね」と、インキつぼは、鵞ペンだの、そのほか、机の上にのっている、耳の聞えるものたちにむかって、言いました。
「ペンとインキつぼ」アンデルセン(青空文庫)
末尾部(原文より)
けれども、詩人は眠りませんでした。さまざまの思いが、バイオリンの中から、わき出てくる音のように、あとからあとから、わきおこってきました。ときには真珠のふれあうように、またときには、森に吹きすさぶあらしのように。詩人は、その中に、自分自身の心を感じました。永遠の名人からの光を一すじ、感じました。 永遠の名人にのみ、さかえあれ。
「ペンとインキつぼ」アンデルセン(青空文庫)
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