ポラーノの広場(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
つめくさ灯ともす夜のひろば
- 幻想
- 青春
- 文字数
- 45,143字
- 読了目安
- 約1時間30分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
「銀河鉄道の夜」「風の又三郎」と並ぶ、宮沢賢治の代表的な長編童話。イーハトーヴォのモリーオ市を舞台に、博物局の若い官吏キューストと少年ファゼーロたちが、伝説の「ポラーノの広場」を探して野原をさまよう。うつくしい五月から十月までの物語。巻末の「ポラーノの広場のうた」でも名高い。
あらすじ
モリーオ市の博物局に勤める十八等官レオーノ・キューストは、競馬場あとの番小屋にひとり住み、山羊を飼って暮らしていた。ある五月の日曜、山羊が逃げたのを追って野原へ出た彼は、羊飼のミーロや少年ファゼーロたちと知り合う。ファゼーロは、つめくさの花の番号をたどっていけば、むかし若者たちが集まって歌い競ったという伝説の「ポラーノの広場」に行き着けるのだと言う。キューストは彼らとともに、夜の野原へ広場を探しに出かけた。ようやくたどりついたその場所は、しかし伝説の広場ではなく、地主のデストゥパーゴ——山猫博士と呼ばれる産業組合の顧問——が選挙のために酒をふるまう、酒臭く荒れた宴会場だった。理想を汚された怒りからファゼーロは博士と争い、行方をくらましてしまう。やがて博士の不正が明るみに出て失脚し、姿を消していたファゼーロたちは戻ってくる。彼らはもう伝説の広場を探そうとはしなかった。自分たちの手で仕事をおこし、ほんとうのポラーノの広場をつくろうというのだ。それから七年、ファゼーロたちの産業組合は苦労のすえに軌道に乗り、ハムや皮類やオートミールを各地へ送り出すまでになった。トキーオの市で働くキューストのもとに、ある日一枚の楽譜が届く。それは、みんなで手に持って歌えるようにした「ポラーノの広場のうた」だった。
登場人物
- レオーノ・キュースト モリーオ市博物局の十八等官。物語の語り手
- ファゼーロ ポラーノの広場を探す少年。のちに産業組合をおこす
- ロザーロ ファゼーロの姉
- ミーロ 羊飼の少年
- デストゥパーゴ 山猫博士と呼ばれる地主・産業組合顧問
冒頭部(原文より)
そのころわたくしは、モリーオ市の博物局に勤めて居りました。 十八等官でしたから役所のなかでも、ずうっと下の方でしたし俸給もほんのわずかでしたが、受持ちが標本の採集や整理で生れ付き好きなことでしたから、わたくしは毎日ずいぶん愉快にはたらきました。 あのイーハトーヴォのすきとおった風、夏でも底に冷たさをもつ青いそら、うつくしい森で飾られたモリーオ市、郊外のぎらぎらひかる草の波。
「ポラーノの広場」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
ポラーノの広場のうた つめくさ灯ともす 夜のひろば むかしのラルゴを うたいかわし 雲をもどよもし 夜風にわすれて とりいれまぢかに 年ようれぬ まさしきねがいに いさかうとも 銀河のかなたに ともにわらい なべてのなやみを たきぎともしつつ はえある世界を ともにつくらん わたくしはその譜はたしかにファゼーロがつくったのだとおもいました。
「ポラーノの広場」宮沢賢治(青空文庫)
名文
あのイーハトーヴォのすきとおった風、夏でも底に冷たさをもつ青いそら、うつくしい森で飾られたモリーオ市、郊外のぎらぎらひかる草の波。
語り手のキュストが、モリーオ市で過ごした日々を懐かしく思い起こす一節。賢治が理想の土地として描いたイーハトーヴォの光と風が、澄んだ言葉の連なりで鮮やかに呼び起こされる。
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。