猟奇の果(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物
猟奇趣味が招く恐怖
- ミステリ
- 怪奇
- 文字数
- 134,986字
- 読了目安
- 約4時間30分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 愛知県
この作品について
江戸川乱歩が1930年(昭和5年)、「文芸倶楽部」に前後篇として連載した長編。退屈と猟奇趣味をもてあました名古屋の資産家の青年・青木愛之助が、あくなき刺激を求めるうちに、恐ろしい罪へと足を踏み入れていく。「猟奇の果が如何ばかり恐ろしきものであるか」——猟奇の徒への戒めとして書かれた、乱歩の怪奇探偵長編である。
あらすじ
「彼は余りにも退屈屋で且つ猟奇者であり過ぎた」——物語の主人公は、名古屋のある資産家の次男・青木愛之助、当時三十歳になるやならずの青年である。退屈のあまり、この世に残された唯一の刺激として猟奇の趣味にのめり込んだ彼は、血なまぐさい興味に引きずられるように、しだいに恐ろしい世界へと足を踏み入れていく。ある探偵小説家が、猟奇が嵩じてついには実際の殺人を犯しはしないかと恐れた——まさにその危惧を、愛之助は現実のものにしてしまう。美しい愛妻・芳江をめぐる謎、彼女と瓜二つの女の出現、そして次々と起こる怪事件。愛之助の運命は、猟奇の果てへと転がり落ちていく。物語の結末では、芳江そっくりの、しかし顔のまるで違うもう一人の美女が、嫣然と微笑みかける。「猟奇の徒よ、卿等は余りに猟奇者であり過ぎてはならない」——作者みずからが戒めとして掲げた、乱歩の怪奇探偵長編である。
登場人物
- 青木愛之助 退屈と猟奇趣味に憑かれた名古屋の資産家の青年
- 芳江 愛之助の愛妻
冒頭部(原文より)
彼は余りにも退屈屋で且つ猟奇者であり過ぎた。 ある探偵小説家は、この様な血腥い犯罪から犯罪へと進んで行って、遂には小説では満足出来なくなり、実際の罪を犯す様なことになりはしないかと虞れた由であるが、この物語の主人公は、その探偵作家の虞れたことを、実際にやってしまった。猟奇が嵩じて、遂に恐ろしい罪を犯してしまった。
「猟奇の果」江戸川乱歩(青空文庫)
末尾部(原文より)
女はゆっくりこちらに向きを変えて、しずしずと部屋の中へは入って来た。後姿は芳江とそっくりであったが、顔はまるで違う。愛之助の愛妻とは似てもつかぬ、しかしこれも亦一個の美人であった。 女はその間近かまで近づいて来た。そして、さもしとやかに一礼すると、愛くるしい靨を見せて、恰好のよいルージュの唇で、嫣然と頬笑むのであった。
「猟奇の果」江戸川乱歩(青空文庫)
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