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細木香以(森鴎外)のあらすじ・登場人物

今紀文と呼ばれた大尽の一生

  • 歴史

森鴎外 1917年(大正6年)9月 「東京日日新聞・大阪毎日新聞」

文字数
22,314字
読了目安
約45分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都
  • 千葉県

この作品について

1917年9月から10月にかけて『東京日日新聞』『大阪毎日新聞』に連載された史伝。江戸末期の新橋山城河岸の酒屋の主人で、豪遊から「今紀文」と呼ばれた細木香以の生涯を追う。鷗外が団子坂の家に住むことになった縁で香以の名を知ったこと、為永春水の人情本に描かれた「津藤さん」の記憶など、作者自身の体験がしばしば語りに入る。香以をとりまく俳人・役者・幇間・画家など多くの人物が登場する。

あらすじ

摂津国屋の二代目藤次郎、細木香以は、新橋山城河岸の酒屋の主人で、為永春水の人情本に出る「津藤さん」の子である。作者は、団子坂の家に移った縁から香以の名を覚えた。香以は文政五年に生まれ、少年のころから料理屋や妓楼に出入りし、父竜池に叱られて一時は改まるが、安政三年に父の跡を継ぐと、俳人、狂歌師、役者、画家、幇間を大勢取り巻きにして豪遊する。河原崎権十郎(後の九代目団十郎)を引き立て、「今紀文」と呼ばれた。やがて身代は傾き、文久二年に店を継母に渡して隠居し、浅草の猿寺、下総の寒川へと退いて、売文と俳諧の判で暮らす。明治元年に店は閉じられ、明治三年九月、四十九歳で没して、願行寺に葬られた。作者は墓を訪ね、花屋の老夫婦に香以の裔を尋ねるが、何もわからなかった。人生の評価は千差万別だと述べ、巻末には取り巻きたちの後日談を添える。

登場人物

冒頭部(原文より)

細木香以は津藤である。摂津国屋藤次郎である。わたくしが始めて津藤の名を聞いたのは、香以の事には関していなかった。香以の父竜池の事に関していた。摂津国屋藤次郎の称は二代続いているのである。

「細木香以」森鴎外(青空文庫)

末尾部(原文より)

香以の他の友人二人の事は文淵堂主人が語った。石橋真国と柴田是真との事である。「石橋真国は語学に関する著述未刊のもの数百巻を遺した。今松井簡治さんの蔵儲に帰している。所謂やわらかものには『隠里の記』というのがある。これは岡場所の沿革を考証したものである。真国は唐様の手を見事に書いた。職業は奉行所の腰掛茶屋の主人であった。柴田是真は気のある人であった。香以とは極めて親しく、香以の摺物にはこの人の画のあるものが多い。是真の逸事にこう云う事がある。ある時是真は息と多勢の門人とを連れて吉原に往き、俄を見せた。席上には酒肴を取り寄せ、門人等に馳走した。然るに門人中坐容を崩すものがあったのを見て、大喝して叱した。遊所に足を容るることをば嫌わず、物に拘らぬ人で、その中に謹厳な処があった。」

「細木香以」森鴎外(青空文庫)

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