彩虹(山本周五郎)のあらすじ・登場人物
ひと雨のあとに立つ彩虹
- 歴史
- 心理
- 文字数
- 13,905字
- 読了目安
- 約28分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
山本周五郎が1946年(昭和21年)、「講談雑誌」に発表した時代小説。伊兵衛と、彼に寄り添うさえ、そして宗之助・脇田をめぐる人間模様を描く。ひと雨降ったあとにこそ立つ「彩虹(にじ)」に、人と人の心のわだかまりが晴れる瞬間を託した一編である。
あらすじ
しめやかで落ち着いた佳い声の端唄が聞こえてくる。窓框に腰かけ、柱に頭をもたせて夜空を眺めていた伊兵衛は、思わず「たいそうなものだな」とつぶやく。その足許で、色紙の貼交ぜの手筐のようなものを作っていたのは、さえ。伊兵衛と、彼に寄り添うさえ、そして宗之助や脇田といった人々をめぐって、物語は静かに動いていく。人と人のあいだには、口には出せぬわだかまりや、すれ違いがある。物語の結び、伊兵衛は、脇田がある思惑をもって振る舞っていたことに気づく。「脇田め、それを承知のうえか、自分がひと雨降らさなければ、二人の上に彩虹の立たぬことを」——あいつは自分の気性を知っていたのか、と。宗之助が平手打をぐっと堪えたときの逞しい表情を思い返しながら、伊兵衛はふと自分の右手を見る。さえは、じっと彩虹を見あげていた。ひと雨のあとに立つ彩虹に、心のわだかまりが晴れる瞬間を託した、山本の一編である。
登場人物
- 伊兵衛 物語の中心の男
- さえ 伊兵衛に寄り添う女
- 宗之助・脇田 伊兵衛をめぐる人々
冒頭部(原文より)
「……ひと夜も逢わぬものならば、二た重の帯をなぜ解いた、それがゆかりの竜田山、顔の紅葉で知れたとや……」 さびのあるというのだろう、しめやかにおちついた佳い声である。窓框に腰を掛けて、柱に頭をもたせて、うっとりと夜空を眺めていた伊兵衛は、思わず、 「たいそうなものだな」 と呟やいた。
「彩虹」山本周五郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
――脇田め、それを承知のうえか、自分がひと雨降らさなければ、二人の上に彩虹の立たぬことを。 ……あいつはおれの気性を知っていた、そうだったか。 平手打をぐっと堪えたときの、逞ましい宗之助の表情を思い返しながら、伊兵衛はふと自分の右手を見た。 ……さえはじっと彩虹を見あげていた。
「彩虹」山本周五郎(青空文庫)
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